映画とライフデザイン

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映画「ペコロスの母に会いに行く」 

2014-07-14 05:41:55 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ペコロスの母に会いに行く」は昨年2013年キネマ旬報ベストテンの1位に選出された作品だ。

最近、老人映画が多く公開される。特に認知症を扱ったボケ映画が増えている。どちらかというと自分の好みではない。昨年キネマ旬報洋画トップの「愛アムール」も似たような題材でつまらないので、ブログにアップしていない。それで避けていたが、今回dvd化され、とりあえず見るかと見てみたら実に面白い。



もともと松竹で喜劇をつくっていた森崎東監督が、映画で面白おかしさを前面に出しているので笑える場面が多い。赤木春恵のボケっぷりを際だたせて、ただ単にまわりに迷惑をかけているという映画にしない。ハゲのかつらをかぶって登場の名脇役岩松了もよく。若き日の主人公を原田喜和子が演じる。この若き日の想い出が胸にジーンとくる場面もある。一時代前では主演を張ったくらいの俳優たちが老人を演じるのもよい。

キネマ旬報ベストワン作品なのに失礼だが、思わぬ掘り出しものを拾った気分になれた。
いい映画だと思う。

長崎生まれの岡野ゆういち(岩松了)は、漫画を描いたり音楽活動をしたりと趣味にうつつを抜かし、仕事に身が入らないダメサラリーマン。小さいたまねぎ“ペコロス”に似たハゲ頭のゆういちは、今日もライヴハウスでオリジナルソングを歌い上げて悦に入っている。
ゆういちの母・みつえ(赤木春恵)の認知症が始まったのは、夫のさとる(加瀬亮)が亡くなった頃からだった。それから10年、ある時は酒を買いに出たところを孫のまさき(大和田健介)に見つけられて連れ戻され、またある時はゆういちが帰ってくるのを駐車場で待ち続けて危うくひかれそうになった。

タンスの引き出しから汚れた下着が大量に出てきたこともある。
ゆういちは、悩みながらも、みつえを介護施設に預けることにする。個性豊かな面々がみつえを歓迎する。しかし、みつえは部屋にこもり、他の人の目には見えない縫い物をし続けるのだった。そんな中、みつえの記憶は少しずつ過去へ遡っていく

若き日の想い出のほうが浮かんで消えないのであった。

自分の母は、6年前にがんで亡くなったが、死ぬ寸前にモルヒネ投入で意識が亡くなるまで頭の方はぼけていなかった。最後に母と交わした言葉も実家の家業に関することである。頭だけはしっかりしていた。それなので、ボケ老人介護の苦しみは知らない。
主人公の母親が、息子ゆういちを誰なのかわからなくなってしまう場面がある。こんな人知らないといったあとで、ハゲ頭を触って息子ゆういちだと初めて認識する場面が何度も出てくる。でも途中でハゲ頭を触らしてもわからない時もある。息子が非常に落胆するのだ。この気持ちわからないが、つらいんだろうなあと思う。

1.長崎
長崎の街は、坂が多い。この地形は映画との相性がいい。田中裕子主演「いつか読書する日では、坂道を自転車で縦横無尽に上り下りする場面が印象的だった。ここでは、主人公の自宅を坂の上にしている。造船所のある長崎の内海を遥かに見渡せるいい場所の設定だ。市電、夜のお祭りの提灯、めがね橋を映しだし、長崎らしさがにじむ映像である。

2.ダメサラリーマンの漫画家
いきなりアニメが映る。主人公親子のプロフィールを簡潔に語る。息子ゆういちは広告会社のサラリーマンで、広告がとれず、営業成績があがらない。うだつが上がらない男だ。ときおりライブハウスで歌っている。仕事に行くと言いながら、公園でサボってギター片手に曲をつくっている。それでも気のいい男だ。
竹中直人とのハゲ談義が笑える。一部場面では腹を抱えて笑った。


3.痴呆老人の施設
夫が亡くなってから母のボケが一気に進む。しかし、息子は男やもめで孫がいる。稼ぎがあるわけでないから、孫もバイトしている。ボケた母親を留守番させて働かねばならない。おれおれ詐欺の電話にも引っ掛かってしまうくらいのボケぶりだ。
施設に入るのも仕方あるまい。
施設は老人たちが皆で歌を合唱するような明るい雰囲気のグループホームだった。女学生時代に戻って恋をしているらしいまつ(佐々木すみえ)、誰にでもアメをねだるユリ(白川和子)、隙あらば美人介護士の胸を揉む洋次郎(穂積隆信)など、

4.キャスティングのうまさ
施設にいる老人が名優だらけだ。それだけで、昭和のテレビドラマができてしまう。青春ドラマの教頭役に絶妙なうまさを発揮していた「積木くずし」穂積隆信、お笑いの殿堂「かしまし娘」正司照枝、下町の母親役には欠かせない佐々木すみ江、にっかつポルノの団地妻白川和子がそれぞれの個性を浮かびさせる。主人公の妹役を、往年の昼メロの常連である島かおりと長内美那子の2人が演じて、久々に見て懐かしくなった。

5.原田姉妹
原田貴和子と言われてもピンとこない。原田知世の姉と言えばわかる。トレンディ映画の名作私をスキーに連れてってでは高橋ひとみとコンビを組んだカッコいい役なのに、その面影がまったくないのでわからなかった。昔の親友(原田知世)が丸山遊郭の娼婦になっていて、仲良くしようにも昔の親友が避けるシーンが印象的で、最後の涙を誘う。

原田貴和子演じる息子ユウイチが小さい頃の妻役がうまい。夫(加瀬亮)が酒好きで、飲んで給料袋の中身をすっからかんにしてしまうシーンが印象的、ここではいい味を出していた。

最後のランタンフェスティバルのシーンで、ファンタジー的要素が強くなる。そこが自分の涙腺を強烈に湿らす。
最後の一青窈の歌がしみじみと心の響き、DVDでは珍しく、エンディングロールの間聴きいってしまった。よかった。

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