映画「ラ・コシーナ/厨房」を映画館で観てきました。
映画「ラ・コシーナ/厨房」は、ニューヨークの大型レストランの厨房で働く様々なルーツを持つ移民たちのパフォーマンスを描いた映画だ。監督・脚本はメキシコ人のアロンソ・ルイスパラシオス。英国の劇作家アーノルド・ウェスカーの戯曲「調理場」を基にしている。戯曲の存在を知るのは初めて。大好きなルーニー・マーラが出ていることと料理を題材にしている映画は見るようにしているので、早速映画館に向かう。
ニューヨークの大型レストラン「ザ・グリル」の厨房は、いつも目の回るような忙しさ。ある朝、店のスタッフ全員に売上金盗難の疑いがかけられる。加えて次々に新しいトラブルが勃発し、料理人やウェイトレスたちのストレスはピークに。(作品情報引用)
極めて不愉快な映画であった。
ただ、厨房で働く人たちの風景を映し出したカメラワークは素晴らしく、これまで見たことない一筆書きのように連続して厨房内を映し出すショットには驚く。
現代のニューヨークが舞台とのコメントもあるが、ルーニー・マーラが公衆電話を使っていること、事務室の机の上のデスクトップパソコンの型式、厨房へのオーダーのシステムなどを見ると、90年代と想像できる。自分も90年代後半にニューヨークのレストランで食事したことがある。映画の客席はそのときと似ている感じだ。自分は割と大食いの方であるが、あまりに想像を絶する肉とデザートの大きさに圧倒された。当然、厨房の裏側を見たわけではない。
これまで厨房内のパフォーマンスを映し出す映画では「ディナー・ラッシュ」、「ボイリング・ポイント」が迫力ある描写をしていた。ここでも厨房内は怒号が飛び交う。せわしなく動き回る料理人たち、立ち込める湯気、食材が飛び交う様子など流れるように厨房内を映し出すショットは前述2作をはるかに上回ると言える。ウェイトレスが運ぶお皿が落ちてしまう時には思わず大声が出てしまった。その点では評価して良いと感じる。ただ、働く従業員の一部があまりにハチャメチャなのでむかつくだけだ。
原作の戯曲の内容を知らないが,社会主義思想に基づいた戯曲であろう。このレストランで働いている従業員は、まさに人種のるつぼだ。白人がわずかで、メキシコ系を中心にしてモロッコやアフリカ系など様々な移民が、狭い厨房という空間で、時にはぶつかり合いながら働いているのだ。ストレスや感情をぶつけ合う移民たちの鬱屈した心を表現しようとする原作の意図をメキシコ出身の監督が大げさに表現しようとしている。しかも、従業員の誰かがカネを盗んだと疑われているわけだ。わざと観客を不快にしていることはよく理解できる。
それにしても、厨房内における実質主人公に近いペドロのパフォーマンスは最低だ。周囲にいる従業員をかき乱す行為だけでなく食材を大事にしないのは料理人としてあるまじき行為だ。これを見るだけでとても不愉快になる。料理人としての立場を全く心得ていない。観るのがツラい。映画はモノクロだ。これも食材を大切にせず、単にキレるだけで厨房や客席を汚物だらけにする映像は出せないからだろう。
不愉快になる事は覚悟の上で映画ファンとしては一部の素晴らしいショットを見るために、映画館に向かう手はあるかもしれない。ルーニーマーラは相変わらずかわいい。