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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「愛されなくても別に」 南沙良&馬場ふみか

2025-07-05 09:29:36 | 映画(日本 2019年以降主演女性)

映画「愛されなくても別に」を映画館で観てきました。

映画「愛されなくても別に」は毒親に悩まされる女子大学生2人が主人公の物語。武田綾乃の小説を井樫彩監督が映画化。メジャー俳優は出ていない。しかし予告編を見ると何か面白そうな感じがした。貧困下層社会を描く日本映画はやたらと多いが,主人公が大学生というのは珍しい。直感で映画館に向かう。南沙良と馬場ふみかの女同士の連帯がいい感じだ。

浪費家の母親のためにバイトと家事に明け暮れる宮田(南沙良)と人殺しの父親に性暴力を受け、母親には体を売れと言われた江永(馬場ふみか)。2人は同じ大学に通いコンビニで働く。仲良くはない。ともに毒親のために恵まれない大学生活を送っている。母親(河井青葉)の金遣いの荒さにキレて家を飛び出した宮田に行く場所がなく、江永のアパートで同居を始める。

毒親の話にとどまらず現代版大学苦学生の実態に迫って予想よりおもしろい。

シングルマザーの毒親だけの話かと思いきや、途中で新興宗教にハマる同級生(本田望結)が描かれることで物語が単調にならずに広がった。現代大学生の孤立や依存先の欲しさにも視点が広がり物語として単なる貧困モノとは違う。

1,大学生が題材の貧困映画

「シングルマザーの子ども」を題材にした映画やドラマって、多くは義務教育の最中や高校生で家を支えたり中卒・高卒で働きに出るというパターンが多い。主人公は大学生で学費も家計も自分で出している。母親は浪費家で働かず、生活費を娘のバイトの収入に依存しているなんて話だ。

その昔の「キューポラのある街」を始めとして、貧困で「進学できない」「夢を諦める」で終わりがちだけど、現代はバイトや奨学金だって家計が苦しくても大学に行く学生も多い。こんな設定があってもおかしくない。

⒉現代の大学生の孤独

今の大学生は学内で友達を作れない人が多いというリアルが背景にある。最近の若い世代を描く日本映画では 「学内のつながりがない」のが当たり前 という状況が背景として使われるのが目立つ。大学が舞台の河合優実主演『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』とも共通する空気感だった。

主人公は「友達ができない」のではなく、ゼミ飲み会の誘いを自ら断ったりして人付き合いを閉じる。こんな感じでただ単位を取りに行くだけで、人間関係が浅いまま卒業する人も多い。この映画のようにバイト掛け持ちしてる学生は「大学=勉強だけの場所、友達を作る場所じゃない」になりがちなのだろうか。

⒊未成年禁酒徹底論に閉口
未成年だから酒が飲めない、コンビニで年齢確認を何度もするなど、細かい描写がリアルに時代を感じさせた。今は大学のコンプラもめちゃくちゃ厳しくて、当然「未成年飲酒は絶対NG」だ。大学のOB会でも、現役の学生がいると何度も飲ますなとしつこくOBに説教していた。コンビニで酒を買うだけで年齢証明が必須というのも自分たちの世代からすると強烈な違和感だ。

⒋新興宗教を題材

一緒に授業を受ける福岡生まれの同期の女子学生(本田望結)が新興宗教にハマっている。「子離れできない」過干渉の母親から退避するために宗教へのめり込むのだ。親から多額の仕送りをしてもらっているのに、バイトした金も宗教法人への多額の献金にあてている。キャンパスで友達は作れない分、宗教のような“依存先”が強まる構造は現代を象徴する。

主人公も誘われて教祖様に会いに行くのだ。そこでの集会シーンに既視感がある。集会のシーンでの「にこやかな信者たちの笑顔」がいかにも偽善的でリアルだった。筒井真理子『波紋』のカルト描写を思い出した。満面に笑顔を浮かべるいかにも宗教法人っぽい信者たちに独特のあやしい雰囲気が漂っている。なかなか上手い。修羅場の中でも教祖が平然としている演出も「いかにも教祖らしい」と感じさせてうまい。

⒌河井青葉の毒親

河井青葉『あんのこと』ではまさに河合優実の母親役で、引き続いての毒親役を演じる。『あんのこと』では娘に売春させ、暴力を振るい、ストーカーのように再登場する最悪の母だった。今回も自宅に男を連れ込み、浪費家で娘がバイトで稼いだ金を搾取をするが、前回ほどの暴力性はない。リアルに身近にいそうな毒親の怖さがあった。前半だけでの登場かと思ったら、「あんのこと」と同様に最後にまた現れる。美人女優なのに、こういう堕落しきった役が上手くなってきた。

⒍普通であればありえない設定(ネタバレあり)

人殺しの娘江永が「父親が殺した相手の息子」からレイプを受けて殺されそうになる。何で娘に仕返しするんだと腹立たしいが微妙なシーンだ。「父親を殺したから仕返し」は江戸時代でもない現代感覚ではあり得ない。しかもそ行為を仕方ないと警察に通報しない展開も現実離れしている。普通じゃない選択をすることは彼女の自罰的なキャラクターにはあっているのかもしれない。そんな気がした。

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