映画「かぞくのくに」は昨年2012年公開の作品
数ある日本映画の中でキネマ旬報日本映画部門で一位の評価を得た。
井浦新そして安藤サクラをはじめ俳優の技量が際立つ良い映画であった。
北朝鮮への帰国事業で祖国に戻った人が病気治療のため日本へ一時帰国するという話とは知っていた。しかし、北朝鮮に絡んだ話はこれまで日本を悪く言う映画が多かった。古くは吉永小百合主演「キューポラのある街」(これって北朝鮮の帰国事業を描いた映画なのに単なる小百合の青春映画と思っている人が多いのに笑う)最近では「パッチギ2」なんて良い例だ。生理的に受け付けなかった。若松孝二監督作品で縁が強くなってきた井浦新が主演ということで見てみたら、想像と違いよかった。傑作だと思う。
見ていてムカついた「パッチギ2」みたいに日本をけなすという部分はみじんもない。むしろ日本に住む在日の朝鮮系の人が横暴な北朝鮮政府当局に翻弄されている姿を描いている。北朝鮮本国が好き勝手やるのにもかかわらず、言うとおりにいかねばならない悲しい性が語られる。ついこの間も朝鮮学校の無償化をめぐって、デモをする姿がテレビに映っていた。非常に不愉快なシーンであった。しかし、この映画を見ると、本国からも良い待遇を受けていない朝鮮系在日のつらい立場に若干同情する。
1997年の東京が舞台だ。
1970年代に帰国事業により北朝鮮へと渡った兄は、日本との国交が樹立されていないため、ずっと別れ別れになっていた。そんな兄・ソンホ(井浦新)が病気治療のために、監視役(ヤン・イクチュン)を同行させての3ヶ月間だけの日本帰国が許された。25年ぶりに帰ってきた兄と生まれたときから自由に育ったリエ(安藤サクラ)、兄を送った両親との家族だんらんは、微妙な空気に包まれていた。兄のかつての級友たちは、奇跡的な再会を喜んでいた。その一方、検査結果はあまり芳しいものではなく、医者から3ヶ月という限られた期間では責任を持って治療することはできないと告げられる。なんとか手立てはないかと奔走するリエたち。そんな中、本国から兄に、明日帰還するよう電話がかかってくる……。
井浦新が演じるシーンの中で印象的なシーンが2つある。
1つは昔の仲間が経営する飲み屋で旧交を温める中で、白いブランコを弾き語りで歌う旧友に合わせて井浦がはもっていくシーン。じわっと涙が出てきた。設定で考えると、97年に41歳くらいの設定だから、自分より少し上だ。でもある意味同世代といえる。72年あたりは当然帰国事業も一段落したことと思っていたが、まだ悲劇に遭遇する人がいたと思うと悲しくなる。
もう1つは北朝鮮へもどった在日である主人公がやりたくない仕事をやらされていることへの強い葛藤を表現するシーンであった。兄が妹に依頼する。「ある特定の人にあった時、どういう話をしたか教えてくれないかと。。」妹はすぐさまスパイ的仕事とひらめく。それはできないと断る。横で聞いていた父親があとで兄を問い詰める。その時に兄は今までと違う感情を爆発させる。これは凄い迫力があった。
今回、兄が自分の家族について何も語らない。少しだけ彼の家族との写真が映像に出るがそれだけである。
ここでも余計なことはしゃべらない。ただ、つらい思いを叫ぶだけである。
イヤーつらいなあ。
他にも「クイズの女王」宮崎美子演じる母親が息子に同行する北朝鮮当局の人間に背広を買ってやるシーンや考えさせられるシーンがたくさんあった。
見ていて本当に在日朝鮮人に同情した。北朝鮮嫌いの全く違う主旨で生きている自分でさえ思うくらいなんだから、そう思わせる映画製作者は大したものだ。しんみりと響く音楽もよくジーンとした。
昨年の日本映画のトップにこの作品を推す気にはならないが、確かによくできている。
数ある日本映画の中でキネマ旬報日本映画部門で一位の評価を得た。
井浦新そして安藤サクラをはじめ俳優の技量が際立つ良い映画であった。
北朝鮮への帰国事業で祖国に戻った人が病気治療のため日本へ一時帰国するという話とは知っていた。しかし、北朝鮮に絡んだ話はこれまで日本を悪く言う映画が多かった。古くは吉永小百合主演「キューポラのある街」(これって北朝鮮の帰国事業を描いた映画なのに単なる小百合の青春映画と思っている人が多いのに笑う)最近では「パッチギ2」なんて良い例だ。生理的に受け付けなかった。若松孝二監督作品で縁が強くなってきた井浦新が主演ということで見てみたら、想像と違いよかった。傑作だと思う。
見ていてムカついた「パッチギ2」みたいに日本をけなすという部分はみじんもない。むしろ日本に住む在日の朝鮮系の人が横暴な北朝鮮政府当局に翻弄されている姿を描いている。北朝鮮本国が好き勝手やるのにもかかわらず、言うとおりにいかねばならない悲しい性が語られる。ついこの間も朝鮮学校の無償化をめぐって、デモをする姿がテレビに映っていた。非常に不愉快なシーンであった。しかし、この映画を見ると、本国からも良い待遇を受けていない朝鮮系在日のつらい立場に若干同情する。
1997年の東京が舞台だ。
1970年代に帰国事業により北朝鮮へと渡った兄は、日本との国交が樹立されていないため、ずっと別れ別れになっていた。そんな兄・ソンホ(井浦新)が病気治療のために、監視役(ヤン・イクチュン)を同行させての3ヶ月間だけの日本帰国が許された。25年ぶりに帰ってきた兄と生まれたときから自由に育ったリエ(安藤サクラ)、兄を送った両親との家族だんらんは、微妙な空気に包まれていた。兄のかつての級友たちは、奇跡的な再会を喜んでいた。その一方、検査結果はあまり芳しいものではなく、医者から3ヶ月という限られた期間では責任を持って治療することはできないと告げられる。なんとか手立てはないかと奔走するリエたち。そんな中、本国から兄に、明日帰還するよう電話がかかってくる……。
井浦新が演じるシーンの中で印象的なシーンが2つある。
1つは昔の仲間が経営する飲み屋で旧交を温める中で、白いブランコを弾き語りで歌う旧友に合わせて井浦がはもっていくシーン。じわっと涙が出てきた。設定で考えると、97年に41歳くらいの設定だから、自分より少し上だ。でもある意味同世代といえる。72年あたりは当然帰国事業も一段落したことと思っていたが、まだ悲劇に遭遇する人がいたと思うと悲しくなる。
もう1つは北朝鮮へもどった在日である主人公がやりたくない仕事をやらされていることへの強い葛藤を表現するシーンであった。兄が妹に依頼する。「ある特定の人にあった時、どういう話をしたか教えてくれないかと。。」妹はすぐさまスパイ的仕事とひらめく。それはできないと断る。横で聞いていた父親があとで兄を問い詰める。その時に兄は今までと違う感情を爆発させる。これは凄い迫力があった。
今回、兄が自分の家族について何も語らない。少しだけ彼の家族との写真が映像に出るがそれだけである。
ここでも余計なことはしゃべらない。ただ、つらい思いを叫ぶだけである。
イヤーつらいなあ。
他にも「クイズの女王」宮崎美子演じる母親が息子に同行する北朝鮮当局の人間に背広を買ってやるシーンや考えさせられるシーンがたくさんあった。
見ていて本当に在日朝鮮人に同情した。北朝鮮嫌いの全く違う主旨で生きている自分でさえ思うくらいなんだから、そう思わせる映画製作者は大したものだ。しんみりと響く音楽もよくジーンとした。
昨年の日本映画のトップにこの作品を推す気にはならないが、確かによくできている。