映画「金子差入店」を映画館で観てきました。
映画「金子差入店」は拘置所の横で収容者のための差入品を販売する店の店主家族を描く古川豪監督の作品。今までの人生、運よく拘置所に絡んだことがなく、差入店があること自体初めて知った。拘置所の中と外をつなぐ重要な存在である。刑務所と拘置所の違いは、裁判で有罪が確定した受刑者がいるのが刑務所で、逮捕後判決がなされる前が拘置所である。この映画では東京小菅の拘置所のそばに差入店がある設定だ。実際に店があるらしい。
丸山隆平主演で助監督としてのキャリアを積んできた古川豪監督の下、真木よう子、寺尾聰、名取裕子、岸谷五朗のベテランに加えて、直近では主役が多い北村匠海と主演級の俳優が脇を固める。かなり豪華な俳優陣だ。週末主演作がある寺尾聰をはじめとしてよく出たなと思うようなラインナップを集めれたのはすごい。主役の丸山隆平はこれまであまり知らない俳優だったが、健闘している。
東京拘置所の近くで、金子真司(丸山隆平)は妻の美和子(真木よう子)と差入店を営んでいる。伯父の星田(寺尾聡)から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。真司には実母(名取裕子)がいて、時おりカネの無尽に真司が不在時に妻にたかりに来ていた。
ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人小島(北村匠海)の母親(根岸季衣)から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は仕事を淡々とこなそうとするが、狂気じみた小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。
そんな時息子の和真が学校でいじめられていることがわかる。事件に関係ないのに殺人犯とされている。実は真司は暴行で拘置所に入所していたことがあったのだ。
予想よりもよくできた作品で、興味深く観れた。
差入店の仕事は収容者への差入品を販売するだけでなく多岐にわたる。衣類などの私物の差し入れや面会も代行している。それなので、極悪犯罪人にも身内から依頼されて代理で会うのだ。
今回は人気絶頂の北村匠海が極悪殺人犯である。主人公金子に10歳の息子がいて、その同級生の女の子が残虐に殺される中での依頼だ。これはしんどい。それで一つのドラマができる。今回は北村匠海がいかにも変態ぽい殺人犯の形相で登場する。朝NHKのTV小説あんぱんでの良い人ぶりとは正反対だ。
⒈久々観た名取裕子
主人公金子には母親(名取裕子)がいて男好きで若い男に貢いでいる。その貢ぐためのお金を息子のところに無尽に来ている。対応する息子の妻(真木よう子)が封筒にカネを夫に内緒で渡している。名取裕子に若き日の面影がなくなったわけではない。すっかり貫禄がついた。タバコをぷかぷか吸って声もドスがきいたド派手な服装の水商売の姐さんのような声だ。ボロいアパートに1人住んでいる。
名取裕子は社長夫人のような役柄も十分できる感じがするが、しばらく観ていなかった。健在だということで再度の登場を期待する。
⒉真木よう子
「さよなら渓谷」以来好きな俳優である。前の主演作「アンダーカレント」も好きだ。この映画を観てみたいと思わせるのも、真木よう子が出ているからだ。
最初に拘置所の面会室で、収容されている男と真木よう子が面談する場面がある。男が異様に憤慨して暴れている。それなのに、しばらくすると金子差入店の妻に収まっている。これってどういうこと?と思わせる。時間がたって金子夫婦の素性がわかっていく。拘置所に入っても夫と離婚せず、叔父(寺尾聰)の面倒もみて差入屋もしっかり守る。夫がツラいときも支える。今回の真木よう子の奥さんぶりは好意的に受け止めたい。
息子の子どもの同級生が殺された事件とはまったく関係ないのに、近所の主婦たちからあなたに来られると迷惑だと訳の分からないことを言われる。何それ?意味不明。しかも、息子が殺人犯だといじめられて父親の金子が学校に乗り込む場面まである。何でいじめられるかよくわからない。差入店は大変なんだといいたいのであろうか?
⒊岸谷五朗と高校生
金子が差し入れの仕事で拘置所の面会受付に行くと、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う。自分の母親を殺した男(岸谷五朗)との面会を強く求めていたのだ。男は拒否するので、毎回門前払いだ。女子高生はショックで言葉を話せない。何だと思っていたが、母親が娘に売春を強要させていたことが、金子の知り合いの弁護士から聞いてわかる。岸谷五郎はヤクザで勤めを終えて出所したら元の組が亡くなっていたと設定だ。そこでドラマが生まれる。
ヤクザが居場所がなくなるのは最近多い設定である。そこに人情モノの要素を加えてラストに向けて高校生も含めた物語をつくる。こんな話で最後に進む。出来過ぎの設定でも岸谷五朗の世捨て人ぶりは割と適役に見えた。