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映画とライフデザイン

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映画「新世紀ロマンティックス」ジャ・ジャンクー

2025-05-10 20:51:40 | 映画(中国映画)

映画「新世紀ロマンティックス」を映画館で観てきました。

映画「新世界ロマンティックス」は中国映画界の奇才ジャ・ジャンクー監督の新作である。原題は「風流一代 Caught by the Tides」。新作が出れば観に行く監督の1人だけに、初日に向かう。中国は文化大革命前後まではもっと閉鎖的で手の内を見せなかった。そんな中国の裏の世界に踏み込む切り口で監督はすばらしい作品を残してきた。ジャジャンクー監督作品の常連で主演のチャオ・タオは監督の妻でもある。彼女を中心に2000年以降の現代中国史をたどるかのように映画は進む。

2001年
中国北部の大同(ダートン)。チャオ(チャオ・タオ)はキャンペーンガールやモデルをしている。恋人は彼女のマネージャーを務めるビン(リー・チュウビン)。北京オリンピック開催が決定するなど、漠然とした期待で中国は盛り上がっているが、大同の炭鉱産業は傾き、失職者だらけだった。ある日、ビンは一旗揚げるために大同を去る

2006年
チャオはビンを探して三峡ダム建設により水底に沈む運命にある長江・奉節(フォンジエ)を訪れる。雄大な長江の景色の中、移住する人、建物を解体する人々でごった返す街。チャオは地方テレビの尋ね人コーナーでビンの行方を捜し、なんとかふたりは再会する。ビンはダム建設に関わり、別の女の影が見えていた。

2022年
コロナ禍、足を引きながら歩くビンはマカオに隣接する珠海(チューハイ)を訪ねるが、居場所を見つけられない。結局大同に戻る

これまでのジャ・ジャンクー監督の仕事の総集編のような映画だった。

当然悪くはないが、今までの新作で感じた中国の裏社会を暴露するような衝撃はなく、新鮮味は薄い。オンボロの建物ばかりだった2001年から20数年経ち近代化が進む中国の変貌をとらえている。

香港好きの自分から見ると、90年代に大陸と言われる中国本土から香港に来ている人たちは服装も鈍臭く一目で区別がついた。香港から恐る恐る国境を越えて本土に入っても同様に極度の差があった。香港周辺でそうなんだから、大陸を中に入った街はなおさらだろう。この映画での大同の2001年の街並みはいかにも昔の中国だ。

文化大革命から改革路線に移って約20年強たっても大同はボロい建物だらけである。そして猥雑だ。街の男性たちの顔つきもいかにも文化大革命を引きずった疲れきった顔ばかりだ。北京オリンピック開催が決まっても、すぐには変わらない。そんなボロい建物での庶民の寄り合いの様子をハンディカメラで残していた。ここまで街が変貌すると貴重な記録だ。ジャジャンクーの映画によくでてきたダンスフロアでディスコの曲に歓喜する姿が、民衆の唯一のはけ口に見える。

06年長江の三峡ダム建設で水に沈むことになり街が壊される。解体がなされて廃墟のような街をチャオタオが彷徨うシーンは以前も見ていて印象的だった。ただ、最初観た時ほどの衝撃がない。解説を読むと「長江哀歌(エレジー)」「帰れない二人」の未使用の素材も使われているようだ。映画を一作撮るごとに、ジャ・ジャンクー監督はかなりの量の映像を撮影したと察する。ピックアップした貴重な映像もあるだろうが、あくまで既存映像の検証に終わって真新しさが感じられなかったのは残念。

「罪の手ざわり」のシーンで、怪しげなサウナのシーンが印象的だった。サウナの従業員なのに売春を強要されてチャオタオがサウナで男を刺す場面には度肝を抜かれた。ここでもサウナのシーンは出てくるが、その時の素材なのであろうか?マカオに隣接する経済特区、珠海(チューハイ)でのシーンは新しい素材で現代ではないか。

そして2022年の大同に戻る。急激に近代化している。2001年と比較すると、あか抜けている。ただ厳重なるコロナ禍でみんなマスクで重装備だ。そして、ビンはチャオの職場で偶然出会うのだ。

もともとの恋人がくっついて離れてを繰り返すとなると、高峰秀子、森雅之「浮雲」マギーチャン、レオンライの香港映画「ラブソング」という不朽の名作がある。いずれもきれいな双曲線を描くような恋の浮き沈みを描く。同じような展開を期待したが、これまでの素材にわずかな新しい素材を加えただけなので、そこまではストーリー性がみえない。あくまで意図的だと思うが、チャオタオにセリフがなかった。個人的にはチャオタオに肉声で気持ちを語ってもらいたかった場面もあった。


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