先週のことになりますが、
前の会社勤務時代、大変お世話になった
バリトンのF先生のリサイタルに伺ってきました。
ピアニストは奥様です。
毎年のように、意欲的にリサイタルを開いていらっしゃいます。
今回は、先生のお宅にある年代もののベヒシュタインピアノを
持ち込んでのリサイタル。
「冬の旅」を中心とした
全てシューベルトのプログラムでした。
まず、奥様のS子先生によるImpromptus D.899-1 c-moll
この曲は、シューベルト晩年の作品。
暗い影をおとしたような音楽は、葬送行進曲にも聴こえます。
S子先生の演奏が始まった途端、
会場内は、冬の雰囲気に包まれました。
こんなにも音楽とピアノの音が調和している演奏に接したのは
初めてでした。
続いて、F先生の「冬の旅」。
木枯らしの吹きすさぶ中を、
恋に破れ、「死」を求めながらさすらいの旅を続ける若者の姿が
はっきり見えるようでした。
木枯らしの音も聴こえてきそうでした。
実は、私は「冬の旅」が大きらいでした。
24曲全曲を通して何しろ絶望感に満ちているし、
1時間以上休憩もなしの演奏だし、
なぜこの曲集が人気があるのか理解できなかったのです。
しかし、この日のF先生ご夫妻の演奏で、
考えが変わりました。
この絶望感に浸るということが、人気の要因ではないかと・・・
それとも自分が年をとったのかな・・・
とにかく、素晴しい演奏でした・・・!
さて、すばらしい演奏の一助となったベヒシュタインピアノ。
このピアノは1920年代のものだそうです。
今から80年以上前に作られたのですよ。
ダルマ足と透かし彫りの譜面台が、とっても素敵でしょ。
調整は、
今年2月のアンサンブルコンサートでも調律をしてくださった、
ピアノマイスターの渾身の作品・・・でした。
ピアノ&調律&演奏・・・
全てが溶け合った、素晴しい演奏会でした。