下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
ミステリ・競馬・ピアノ・スポーツなどがメイン記事です。

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

2007-07-20 21:35:32 | 
この作品が読んでみたくて、歌野氏の昔を読んでたわけです。
傾向と対策は何となく分かってきた感じなので、いよいよチャレンジ。

俺・成瀬将虎は、「何でもやってやろう」というチャレンジ精神に富んだ元私立探偵。
ジムで体を鍛えつつ、後輩の高校生・キヨシや妹・綾乃の面倒を見るのに忙しい。
ある日、同じジムに通うお嬢様・愛子から、調査の仕事を受ける。
彼女のおじいさんが、悪徳商法に引っかかった挙句、保険をかけられて殺されたというのだ!
運命の女・麻宮さくらとの出会いに揺れながら、再び危険な仕事に飛び込む俺。
ところが、どうやらその悪徳業者は一筋縄ではいかないようで・・・

おおお。ハードボイルドじゃん!というのが、最初の数ページの印象。
構成としては成瀬の今が奇数章で語られていき、
偶数章で、成瀬の過去や事件のサイドストーリーが語られる凝った構成。
どちらも「次どうなるんだ!?」という興味を巧妙にはぐらかし、
先を読み進めずにはいられない「じらし技」となっており、憎い構成です(^^;
特にヤクザ探偵・成瀬の過去には、奇妙な殺人事件も発生していて、
また危険すぎる仕事の結末への興味も、迫力も、読者をひきつけずにはいられません。

そして、結末。
「!?」
はい、これで足りるのではないでしょうか(苦笑)
多くを語らずとも・・・あるいは多くを語ってはいけない、そんな作品です。

ラーメンは、とんでもない代物に進化していました。
上手さ凝縮、濃厚だし、でも食べやすい、新創作ラーメン。
ええ~! そんなものをラーメンに入れるのですか!?という衝撃。

この作品を読みたかったのは、第4回本格ミステリ大賞受賞作ということから。
その回には、有栖川氏の『スイス時計の謎』も候補作に上がっていました。
あの名作をおさえての受賞ということで、興味津々だったわけです。

で。『葉桜~』も大変面白いミステリでしたが、『スイス時計~』とはタイプが違う。
前者は作品全体で一つの世界を作り上げ、その世界を読者に饗するという感じの「物語」だし、
後者は1つの事件を論理で突き詰めることによって、眩暈に似た解決がなされるという「パズル」で。
でも、やはりどちらもミステリ・・・懐が深いですよね、ミステリって。(ラーメンと同じだ♪)

私が「本格」だと思ってきたものは「パズル」の方なのですが、
この『葉桜の季節に君を想うということ』が本格ミステリ大賞に輝いたということは、
歌野氏が受賞のコメントで述べたように、「本格」の認識が変化しているということなのでしょう。
ちなみに、歌野氏自身はこの作品を「本格」とは距離をとった作品だとおっしゃっていて、
ご自身は『スイス時計の謎』に票を投じています。面白いですね。

歌野氏のその他の作品もまた、おいおい読んでいきたいと思います♪