『金のなる木は清い土で育つ―清豊の思想』という本を読みました。
以前、このブログの記事で『スリッパの法則』という本を紹介しましたが、同じ著者による本です。『スリッパ』が伸びる企業の見分け方を説いた本だとすれば、この『金のなる木』は株式投資が決して利己的なものではなく、むしろ社会性を帯びた行為であることを説明した本です。株式投資において覚えておくべき心構えを確認した本だといえるかもしれません。
どうすれば株で儲けることができるかというテクニックの説明ではなく、株で儲けることと社会の豊かさの増進との結びつきを確認している本です。
例えば、「付加価値」というものを著者は見えないところでお客を喜ばせるサーヴィスととらえています。同じ一流の食材を用いた料理でも、たんにお客に出すのではなく、いかにお客に最高の贅沢を感じてもらえるかを考えた演出によって、多くの付加価値が生み出されます。
株式投資とは、こうした経営者の付加価値を生み出す努力を応援することであり、それが結果的には多くの人を喜ばせ、社会を豊かにすることができます。
「マネー・ゲーム」という言葉で株を蔑むことはよくあり、株式投資自体は道徳とは無縁なルールに過ぎないけれど、そのルールも投資家の企業の見分け方次第で社会を豊かにし、結果的に自分も豊になることができる、そういうことをこの著書は教えてくれます。
個人的には、著者が中国で出会った数学者の話が、この著書の言いたかったことと少しそれるけど、興味深いものでした。
この数学者の身体があまりにもがっしりしているので、著者がそのことについて聞くと、じつは彼は文化大革命によって学者としての地位を奪われ、農村で長い間働かされたそうです。インテリとしてのプライドをズタズタにされつらい思いもしたそうです。
しかし同じように働いている農民と一緒にいることで、ただ生きていることだけでもどれだけ有難いかを思い知らされたということです。
その話を読んでいて、「知識」の習得が好きな自分が同じ境遇に置かれたら、尾の数学者と同じことを想うことができるか、少し不安になりました。その数学者の方は、外からはうかがい知れないほど、多くの苦しみを経てそういう認識に到達したのではないかと思います。
無理に苦しみを選択する必要はないし、その数学者の方の境遇にあこがれる必要はありません。けれど、それでもその数学者の方の到達した認識は、とても高いところにあるもののように感じました。
涼風
著者の藤野英人さんのブログ:RHEOS REPORT
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