『「学力低下」をどうみるか 』という本を読みました。著者はテレビでも見かける尾木直樹さん。2002年の本ですからもう5年も前です。
この本で尾木さんが言おうとしている中で印象的だったのが以下の点です。
日本の子供が学力低下しているという言説は間違い
この尾木さんの主張は、2000年に経済開発協力機構OECDが32カ国の15歳の男女を対象に実施した「国際学習到達度調査」(PISA[生きるための知識と技能])の結果を踏まえてなされたもの。
日本の子供の「学力低下」が騒がれ始めたのは、国際教育到達度評価学会IEAによる成績調査において、かつては1位を占めていた日本の数学力が99年に5位になったことを受けて起こった現象でした。
それに対し尾木さんは、世界190カ国の中で数学5位・理科4位という成績を維持していることを「学力低下」とみなすことがおかしいことを指摘します。
またOECDのPISA調査は、単なる基礎知識の定着度を測定するのではなく、「覚えた知識や技能を実生活上でどの程度生かすことができるのか」という応用力を測ろうとしているテストであることを確認したうえで、日本の子供の「読解力」は「総合読解力」8位、「情報の取り出し」6位、「解釈」8位、「熟考・評価」は5位と好成績を修めている。また、「数学的リテラシー」ではなんと1位で、「科学的リテラシー」では2位とのこと。
このPISA調査結果は日本でも大きく報道されたのでしょうか?それを踏まえてた上で、今でも「ゆとり教育」批判が行われているのでしょうか。この調査結果が公表された当時、私はドイツにいたのですが、ドイツはどの分野でも軒並み中・下位グループで、国中が大騒ぎしていました。
このPISA調査の具体的な「問題」については、尾木さんがこの本で簡単にまとめていますし、類似の本は多いでしょうから、興味のある方はご覧になってはいかがでしょう。
例えばこの調査では「読解力」は「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」と定義されています、
私には、ここで紹介されている問題の具体例はどれも難しい問題ですが、それでもこのPISAの問題が、単なる知識を問うのではなく、それらの知識を自分の力で応用していく力を試しているのだということは伝わってきます。多分、本当に「頭のいい」子でなければ解けない問題が多いのでしょう。そういったテストで好成績を修めている以上は、日本の子供の学力が低いとはとても言えないのでしょう。
もう一つ尾木さんが強調することは、
総合学習は確かに子供の学ぶ意欲を高める
ということ。
ここで言う総合学習とは、つまり自分の学びたいテーマを自分で選び、自分で調べていくこと。要するに大学で書くレポートのようなものを高校段階で取り組むということですね。
そのレポートのテーマは、例えば
「米の関税化」
「テレビゲームと少年犯罪」
「介護保険について」
「学校週五日制」
「産業廃棄物の光と影」
などなど(p.188)。
総合学習には、生徒が一人ひとり自分でテーマを掘り下げることから、教師と生徒が一緒になってディスカッションして行ったり、著名人を招いた講演会を開いたりと様々な形態があるようですが、どれにも共通して言えるのは、他の学校の教科のように「正答」があるわけではないことや、現実の社会により密接に結びついた問題が取り上げられると言うこと。
この総合学習を取り入れて生徒の意欲を高め、大学進学率を驚異的に上げた京都の公立高校・堀川高校が有名ですが、同じような例が以前から存在していることが尾木さんの本を読めば分かります。この本でも、総合学習を取り入れることで大学進学率を上げた高校が紹介されています。
もちろん、総合学習を取り入れればすべての子供の成績が伸びるわけではないでしょう。それで子供のやる気がでるならば、すべての日本の大学生は勉強ばかりしていることになります。
おそらく堀川高校というのも、公立ではトップクラスの高校で、元々勉強の素質のある子が集まっているのだと思います。ただその素質を伸ばすきっかけがこれまでなかったということなのでしょう。
ただ同時に、以前、偏差値で言えば50前後の私立大学の教員の人と話していて、社会問題についてディスカッションさせたり調べたりさせると、いわゆる「一流大学」と呼ばれる学生と遜色はないとおっしゃっていたことが印象的でした(それに対して、語学力はやはり落ちるとのこと)。
つまり、偏差値の高低に関わらず、より現実生活に根ざした問題について学習させることは、たしかに子供の学ぶ意欲を高める効果はあるということなのではないでしょうか。
尾木さんのこの本を読んで感じるスタンスは、決して子供の「学力」が低いことがよいのではないということ。ただ、科挙のような従来の知識偏重は子供にとって望ましい「教育」の役割を果たさないということです。
この本で尾木さんが言おうとしている中で印象的だったのが以下の点です。
日本の子供が学力低下しているという言説は間違い
この尾木さんの主張は、2000年に経済開発協力機構OECDが32カ国の15歳の男女を対象に実施した「国際学習到達度調査」(PISA[生きるための知識と技能])の結果を踏まえてなされたもの。
日本の子供の「学力低下」が騒がれ始めたのは、国際教育到達度評価学会IEAによる成績調査において、かつては1位を占めていた日本の数学力が99年に5位になったことを受けて起こった現象でした。
それに対し尾木さんは、世界190カ国の中で数学5位・理科4位という成績を維持していることを「学力低下」とみなすことがおかしいことを指摘します。
またOECDのPISA調査は、単なる基礎知識の定着度を測定するのではなく、「覚えた知識や技能を実生活上でどの程度生かすことができるのか」という応用力を測ろうとしているテストであることを確認したうえで、日本の子供の「読解力」は「総合読解力」8位、「情報の取り出し」6位、「解釈」8位、「熟考・評価」は5位と好成績を修めている。また、「数学的リテラシー」ではなんと1位で、「科学的リテラシー」では2位とのこと。
このPISA調査結果は日本でも大きく報道されたのでしょうか?それを踏まえてた上で、今でも「ゆとり教育」批判が行われているのでしょうか。この調査結果が公表された当時、私はドイツにいたのですが、ドイツはどの分野でも軒並み中・下位グループで、国中が大騒ぎしていました。
このPISA調査の具体的な「問題」については、尾木さんがこの本で簡単にまとめていますし、類似の本は多いでしょうから、興味のある方はご覧になってはいかがでしょう。
例えばこの調査では「読解力」は「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」と定義されています、
私には、ここで紹介されている問題の具体例はどれも難しい問題ですが、それでもこのPISAの問題が、単なる知識を問うのではなく、それらの知識を自分の力で応用していく力を試しているのだということは伝わってきます。多分、本当に「頭のいい」子でなければ解けない問題が多いのでしょう。そういったテストで好成績を修めている以上は、日本の子供の学力が低いとはとても言えないのでしょう。
もう一つ尾木さんが強調することは、
総合学習は確かに子供の学ぶ意欲を高める
ということ。
ここで言う総合学習とは、つまり自分の学びたいテーマを自分で選び、自分で調べていくこと。要するに大学で書くレポートのようなものを高校段階で取り組むということですね。
そのレポートのテーマは、例えば
「米の関税化」
「テレビゲームと少年犯罪」
「介護保険について」
「学校週五日制」
「産業廃棄物の光と影」
などなど(p.188)。
総合学習には、生徒が一人ひとり自分でテーマを掘り下げることから、教師と生徒が一緒になってディスカッションして行ったり、著名人を招いた講演会を開いたりと様々な形態があるようですが、どれにも共通して言えるのは、他の学校の教科のように「正答」があるわけではないことや、現実の社会により密接に結びついた問題が取り上げられると言うこと。
この総合学習を取り入れて生徒の意欲を高め、大学進学率を驚異的に上げた京都の公立高校・堀川高校が有名ですが、同じような例が以前から存在していることが尾木さんの本を読めば分かります。この本でも、総合学習を取り入れることで大学進学率を上げた高校が紹介されています。
もちろん、総合学習を取り入れればすべての子供の成績が伸びるわけではないでしょう。それで子供のやる気がでるならば、すべての日本の大学生は勉強ばかりしていることになります。
おそらく堀川高校というのも、公立ではトップクラスの高校で、元々勉強の素質のある子が集まっているのだと思います。ただその素質を伸ばすきっかけがこれまでなかったということなのでしょう。
ただ同時に、以前、偏差値で言えば50前後の私立大学の教員の人と話していて、社会問題についてディスカッションさせたり調べたりさせると、いわゆる「一流大学」と呼ばれる学生と遜色はないとおっしゃっていたことが印象的でした(それに対して、語学力はやはり落ちるとのこと)。
つまり、偏差値の高低に関わらず、より現実生活に根ざした問題について学習させることは、たしかに子供の学ぶ意欲を高める効果はあるということなのではないでしょうか。
尾木さんのこの本を読んで感じるスタンスは、決して子供の「学力」が低いことがよいのではないということ。ただ、科挙のような従来の知識偏重は子供にとって望ましい「教育」の役割を果たさないということです。