a図で小さな円に囲まれている円は、b図の大きな円に囲まれている円と同じ大きさなのですが、a図の円のほうが大きく見えます。
心理学では、a図の円のほうが大きく見えるのは対比効果によるという風に説明されているようです。
a図では小さい円に囲まれているからそれとの比較で大きく見え、b図では大きな円に囲まれているのでそれとの比較で小さく見えるということのようです。
そう説明されるとなんとなく納得した気分になりますが、釈然としない感じもします。
なぜかといえば、二つの円を囲んでいる円の大きさは、a図とb図とでは大きな開きがあるのですが、中心の円の大きさはそれほど違っているようには見えません。
対比効果というからには、もっと違いがあってもよさそうな感じがするからです。
ところで、a図の円を見るときは、とうぜん円に注意を向けてみているのですが、このときは注意を向けてみる範囲が狭くなっています。
そこで単に円に注意を向けて見るのではなく、円を囲んでいる四角い枠に注意を向けて見るとどうでしょうか。
まわりの四角い枠あるいは四隅の小さな四角に注意を向けて見ると。真ん中の円は先ほどより小さく見えます。
そこで再び真ん中の円にもっぱら注意を向けて見ると。元のようにやや大きく見えます。
つまり同じ円を見るにしても、注意の範囲を狭くしてみるときと、範囲を広げてみたときとでは大きさが違って見えるのです。
ちょうど写真を撮るとき、狭い範囲をとろうとするときはズームアップするようなもので、見る範囲が異なれば同じものが違った大きさに見えるのです。
b図のほうは取り囲んでいる円が大きいため、図全体が大きくなっていますから、ちょうどa図の四角形を意識的に見た場合と同じで、注意を向けてみる範囲が自然に広げられています。
そのため真ん中の円はa図をまわりの四角形にも注意を向けてみた場合と同じくらいの大きさに見えます。
つまりa図の円の法が大きく見えたのは、囲んでいる円が小さいということよりも、狭い範囲に注意を向けて見ていたからだという風に考えられます。
ですから逆に、b図の真ん中の円に注意を絞り込んで見ていると、b図全体を見ていたときよりも大きく見えてきます。
ラマチャンドランという心理学者は、a図とb図の中心の円を指でつまもうとすると、指の構えはaの場合もbの場合も同じ大きさだということを確かめて、目では違った大きさに見えても手指のほうは錯覚しないで、両方同じ大きさということを感知しているとしています。
しかし上の実験でわかるとおり、同じ円形でも注意を向ける範囲で大きさが違って見えるのですから、目が錯覚しているとは言えないのです。
円をつまもうとして指を構えるときは、a図の場合もb図の場合も中心の円に注意を向けているので、そのときはa図の場合もb図の場合も同じ大きさに見え、とうぜん指の構えも同じになるのです。
またa図とb図の中心の円を別々に見るのでなく、両方の目で同時に見るのではなく、同時に見ても、両方の円が同じ大きさであることは実感できます。
二つの中心円を同時に見るという場合は、注意を向けてみる範囲は同じですから、同じ大きさに見えるのは当然です。
対比効果という説明は、説明の言葉自体が説得力を持ったために普及してしまったものなのです。
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