日本語ではすべてカナで書かれた文章よりも、漢字かな混じり文のほうが読みやすいだけでなく速く読めます。
ところが、漢字かな混じり文のほうが速く読めるというのは黙読の場合であって、音読の場合は差がないそうです。
御領謙「読むということ」によると、文章でなく単語だけを読む場合は、逆にカナよりも漢字のほうが処理時間が長くなるそうです。
単語を見せて音読させた場合、カナよりも漢字の場合のほうが発生までに時間が掛かるのです。
文章を読むときは、漢字かな混じり文のほうが速く意味がつかめるのに、音読しようとするときは漢字の部分の処理が遅いため、音読速度は同じになってしまうというのです。
上の図のように、一文字の漢字で読みが一拍のもの、二拍、三拍、四拍のものをそれぞれ、ひらがなで表記したもの、ひらがな表記の一部を変えて無意味にしたものを読ませて、漢字を読んだ場合と比較すると、漢字を読む場合のほうが処理が遅くなっています。
ひらがなの読みの一部を入れ替えて、無意味語にした場合で三拍を超えた場合は漢字のほうが速く処理できていますが、有意味のときはひらがなのほうが早く処理できているのです。
音読のとき漢字よりカナのほうが速いのは、本来カナは音声を表す記号だからです。
カナを見れば自動的に音声化し、音の組み合わせから意味を把握するようになっているので、音声化は意味の把握に先行するのです。
漢字の場合は逆に意味を表しているので、意味を把握した後で音声化が行われるので、音読の場合は漢字のほうが遅れるのです。
瞬間的に漢字を提示した場合、千分の一秒程度の表示でも漢字を認識できるといいますが、千分の一秒後に音読できるということではありません。
音読は約0.5秒後からで、カナは0.4秒後でカナのほうが速く音読できるのです。
カナのほうが速く音読できるといっても、単語が漢字一字語とか二字語の場合のことで、四字以上になればこのような差はなくなってくるでしょう。
たとえば「空前絶後」とか「経済財政諮問会議」、「科学技術教育強化政策」などという語を「くうぜんぜつご」、「けいざいざいせいしもんかいぎ」、「かがくぎじゅつきょういくきょうかせいさく」などと表記した場合はカナのほうが速く読めるとは限りません(個人差はありますが)。
漢字の字数の多い語の場合は、読みも長くなってくるので、いくつかの意味のかたまりに分けて全体の意味を理解することが必要になるのです。
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