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単語の構成要素と意味

2008-10-04 22:53:52 | 文字を読む
 英語の話者の場合、会話ができるのにアルファベットが読めなくなる失読症という症状があります。
 日本人の場合も脳に損傷を受けた患者が、ひらがなやカタカナが読めなくなることがあるのですが、かなは読めないのに漢字は読める場合があるといいます。
 このことから、漢字がマジカルな力を持っていると思ったり、あるいは日本人の脳が特殊であるように感じるかもしれません。
 しかし、これは初期のころの脳科学者が、漢字が文字であると同時に、単語であり一文字で意味を持っているということを考慮しないで、カナやアルファベットの一文字と同列に考えて比較してしまった結果です。

 失語症が発見された初期には、アルファベットやカナなどの表音文字がわからなくなるという例が目立ったのですが、その後研究が広がるにつれ、英語でも単語なら読めたりする例も発見されています。
 また漢字の場合でも、漢字一文字は読めても熟語になると読めないという例(たとえば花が読めても花弁となると読めないなど)がでてきています。

 たとえば漢字の「花」は単語としての構成要素に分解すると草冠に「化」で、草冠が意味の範囲を示し、「化」が「カ」という音声を示しています。
 したがって、「花」という字が読めても、もしこれらの要素をひとつずつ順に示せば、意味がわからないという可能性が高いのです。
 カナやアルファベットは一文字単位では意味がなく、文字列となったとき単語の音声を表し、その音声が示す単語の意味をあらわすということになります。
 したがって文字を十分に読み慣れていれば、文字綴りの形が単語の意味と結び付けられ、綴りを見れば意味が思い浮かぶようにもなります。
 アメリカで速読術のようなものが最初に作られたのも、読みなれれば単語を音声に変換しなくても、見るだけで瞬間的に意味が思い浮かべられるからです。

 アルファベットは音声を表すためのものであるといっても、それは文字を覚え始めのときのことで、何度も文字を読んでいれば、いちいち音声に直さなくても意味がわかるようになります。 
 また単語によっては耳で覚えるよりも先に、活字などの形で目で先に覚えるものもあります。
 英語の場合は特にギリシャ語とかラテン語、フランス語などから借り入れた単語が多く、普通の人には読み方がわからないものもありますから、文字と意味が直接結びついてしまっている場合もあります。

 日本語の場合はカナのほかに漢字を使っていて、意味の部分は漢字で書かれる場合が多くなっています。
 ところが漢字は基本的には中国のもので、外国語ですから読み違いが多発しても当然で、意味は漠然とわかっても間違った読みをしている場合があります。
 意味がわかる場合でも、熟語の場合などは全体として意味がわかっていながら、ここの漢字の意味になるとわからないという場合もあります。
 「会議」なら「会して議する」というように直解できても「銀行」「会社」「遊説」など、個々の漢字の意味を理解しないまま熟語全体として意味を理解している場合がかなりあります。
 こうした例では、単語を覚えるときも構成要素に注意を向けるとかえって記憶の負担が増すので、単語全体の意味を覚えたほうが手っ取り早いのです。
 


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