ものを見るときの眼球の動きは、注視点から次の注視点に急激にジャンプするという運動を繰り返します。
文字を読む場合では一つ一つの文字を連続的に見ていくのではなく、ある場所を注視してから、いくつかの文字を飛び越えて次の場所に注視点を移し、さらにジャンプして次の注視点へ向かうという動作が繰り返されます。
こうした眼球運動をサッカード眼球運動といいますが、サッカードの大きさは一定ではありません。
図はアメリカの大学生の読み手の注視時間と、行替えを除いたサッカードの大きさの頻度分布だそうです。
サッカードの大きさの分布は二つに分かれていますが、0以下のものは前にジャンプするのではなく後ろにジャンプする、つまりあと戻りをする場合を示していますが、これはごく小さな山ですからあと戻りは非常に少ないことを示しています。
前に進むサッカード運動は5文字以下というのは少なく、8文字前後が多いのですが、20字を超える場合もあります。
目が注視したとき7文字程度がハッキリ文字が読み取れる範囲なので、普通に考えれば次の注視点は7文字程度先ということになります。
サッカードの大きさが10文字以上というのはハッキリ見えない場所に注視点を移すということです。
先にある文字がハッキリ見えなくても、単語の形とか文字のおおよその形などから読取が可能になり、ハッキリ見える範囲を越したところまで中止点をジャンプすることができるのでしょう。
音声で言葉を聞く場合は、話の流れから先を予測することはできても、聞こえるわけではありませんから先聞きというわけには行きません。
文字の場合は、文脈から先を予測できるだけでなく、周辺視野にある情報から現在注視しているより先の文字や単語を読むことができるのです。
また文字を読むとき、注視点より5文字程度から左側は手などで隠しても読みに差し支えはないのですが、右側は7文字ぐらいから先を隠すと極端に読むスピードが落ちるそうです。
左側は既に見た情報で、右側はこれから見る情報なので、ハッキリ見えなくとも読むための手がかりとして必要な情報なのです。
注視時間はどんな場合も同じというのではなく、200ミリ秒前後が中心になっていますが、100ミリ秒以下の場合もあれば500ミリ秒以上というのもあります。
網膜に単語が映るスピードはどんな文字であれ単語であれ、変りはありませんから、注視時間に差があるということは、理解のスピードに差があるということです。
分りやすい単語、出現頻度が高い単語、よく知っていて馴染みのある単語などは注視時間が短くてすみますが、逆の場合は注視時間が長くなります。
脳が処理しやすい単語は注視時間が少なくてすみ、処理しにくい単語は注視時間が長くなるのですから、ムリに注視時間を短くしようとすると、意味が分からないで前に読み進むということになります。
注視時間を短くするには何らかの方法で、単語理解の速度を上げる必要があるのです。
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