60歳からの視覚能力

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注意の向け方と視覚的判断

2008-01-20 22:39:13 | 視角と判断

 図の九つの白い円の内側にある黒点は、「田」の字状に整列しているのですが、何となく眺めるとバラバラに位置しているように見えます。
 人間の目は注意を向けた中心部分は細部まで正確に見えますが、周辺部分は大雑把にしか見えません。
 そのため全体を見た場合、細かな黒点の位置はハッキリは見て取れませんが、大きな円の位置は見て取れるような気がします。
 大きな円は「田」の字に並んでいるようであっても、整然とではなくかなりゆがんだ形になっています。
 そのため何となく漠然と図を眺めた場合は、円の中の黒点の位置もゆがんで見えてしまうのです。

 たとえば一番左の列の三つの黒点は上から垂直線上に等距離に位置しているのですが、注意してみないとそのようには見えません。
 最初に左上の黒点に注意を向けてみて、そのあとその下の二番目の黒点を見ると、二番目の黒点は真下にあることがわかります。
 そのあと三番目の黒点を注視すればこれが二番目の黒点の真下にあることが実感され、改めて三つの黒点を見れば垂直線状にあることが実感できます。

 同じように真ん中の列についても、三つの黒点は垂直線上にあることが実感でき、さらに右の列についても三つの黒点は垂直線上にあることが実感できます。
 そのうえで図全体の中央に視線を向けて図形全体を見ると、九つの黒点が「田」の字状に整然と並んで見えるようになります。
 
 三列の黒点が垂直線状に等間隔で並んでいた状態が視覚的に記憶されガの請っているため、大雑把にしか見えないはずの黒点の位置が正確に見えるようになるのです。
 
 これはちょうど視力検査をやるとき、あらかじめ両眼で見てが分ってしまったりすると、環が切れている場所が片目でも見えてしまうのと似ています。
 しかしこのような見え方は、視覚的な記憶が残っているときだけのもので、しばらく時間を置いて記憶がなくなった頃に見直すと、記憶が残っていたときのようには見えず、迷いが出てきます。

 ところで右側の図のように円がグレーの場合は、一見したとき中の黒点は垂直線上にない様に見えますが、グレーの円が穴があいていて下地が見えた状態と思ってみると、自然に三つの黒点は垂直線状に見えます。
 このような見方を応用して、左の白い円の場合も、穴が開いていて、下地が白であると思って全体を見れば、九つの黒点は「田」の字状に整列して見えるようになります。
 白い円に注目していると難しい場合は、円の外側に注意を向け穴のあけられた一枚の板のように見れば、穴の中に見える黒点が整列して見えるようになります。
 注意の向け方、つまり意識の仕方で視覚的判断が変わるのです。