ピタゴラスの定理というのは直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗を加えたものに等しいというもので、①図でいえばaの二乗とbの二乗を足したものがcの二乗に等しいというものです。
ピタゴラスの定理の証明法というのは100以上もあるということですが、最も視覚的にわかりやすい説明のために②のように斜辺に向かって垂直線を引きます。
その結果もとの直角三角形は、形が同じで大きさが異なる(相似形の)二つの直角三角形に分割されます。
このときaの二乗プラスbの二乗イコールcの二乗だということが分ります。
なぜか気がつかないとすれば、それは②図を見たとき二つの小さな三角形が見えていて、二つをあわせた大きな三角形を見失っているからです。
③図は二つの小さな三角形とそれを合わせた大きな三角形をバラしてみせたものです。
こうしてみると三つの三角形は大きさが違いますが形は同じで、それぞれの面積は辺の長さの二乗に比例します。
三角形Aと三角形Bを足したものが三角形Cですが、それぞれの面積はaの二乗、bの二乗、cの二乗に比例するのでaの二乗プラスbの二乗はcの二乗だということになります。
②図を見て三角形がいくつあるかと聞かれた場合、うっかり二つと答えてしまう人もいるかもしれませんが、三つだといわれても分からない人というのはまず、いないでしょう。
チンパンジーの場合は三角形が三つあるということが分らないそうですが、これは目に見える二つの三角形のほかに、同時にこれを合わせた大きな三角形を見ることができないためです。
大きな三角形の中には線が一本はいっていますが、これを無視しないと大きな三角形は三角形とならないので、大きな三角形を認識するには抽象能力が必要です。
単純にものをあるがままに見るという視覚能力では、チンパンジーは人間と変わることはなく、むしろ人間よりも優れていたりします。
人間の場合はただものを見るだけでなく、抽象化によって異なった次元のものを見ることで、そこにある関係を把握することができるのです。
直角三角形が二つの相似形の三角形に分割できるということから、ピタゴラスの定理を直感的に理解できたりもするのです。