60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

注意の向け方で変わる見え方

2008-01-14 22:45:49 | 視角と判断

 A図は有名なミュラー.リヤー錯視図で①と②の軸線は同じ長さなのに、①のほうが長く見えます。
 図形全体としては①のほうが長いのですが、軸線の部分は同じ長さです。
 ①の軸線のほうが長く見えてしまうのは、軸線の部分を図形全体から切り離して見ることができないため、図形全体の長さに影響されてしまうためだと考えられます。
 子供と高齢者はこの錯視の度合いが大きいのは、全体から部分を切り離して見ることができないためだとされています。

 B図は軸線の長さと直径が同じ円を描いて、そこに①と②を配置して見え方を調べたものです。
 左の図では②が横に、①が縦に配置されていますが、①のほうが②より長く見えるので、普通に見れば円は横長に見えます。
 軸線の部分は円によって境界がハッキリするので、理屈から言えば円が正しい円に見えれば縦と横の軸線は同じ長さに見えているはずです。
 ところが円でなく横と縦の線である①と②に注目してしまうと、①のほうが長く見えてしまうために円が横長に見えてしまうのです。

 同じように右側の図を見ると①が縦に②が横に配置されているため、円はこんどは縦長に見えてしまいます。
 円が縦横等しい正円に見えれば、①と②の軸線は同じ長さに見えるのですが、縦に配置されている①のほうが長く見えるために、円のほうが縦長に見えてしまうのです。

 C図はB図の縁の部分を赤くしたもので、直線でなく円のほうに注意を向けさせやすくしたものです。
 左側のずでは赤い円に注意を向けれれば、Bの場合と違って横長ではなく、縦横がほぼ等しい正円と見ることができます。
 線が赤いので①や②と切り離して見ることができるために、本来の正円と見ることができるのです。
 同じように右側の図は赤い円に注意を向けて見れば、縦長に見えていた円が正円に見えるようになります。

 円に注意を集中して見れば、円は正円に見えるということですから、こんどはB図にもどって、円に注意を集中して見れば以前より左右の円は正円に見えるようになります。
 それでも円が横長に見えたり縦長に見える場合は、円と直線が接する四点を同時に見るようにすると、円を注視したと同じ効果があり、正円に見えるようになります。
 見え方が変わるというのは、脳がどのように解釈するかによるというふうに言われることがありますが、実際にはどこに注意を向けるかによって見え方が変わるのです。
 脳の解釈によって注意の向け方が変わるということはありますが、目立つものに注意が向いたりするように、脳の解釈が必ず先にたつとは限らないのです。