60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

言葉を使わないで計算する

2008-01-06 22:00:29 | 視角と判断

 米デューク大学E・ブラノン准教授(認識神経学)の研究では、サルにも足し算の暗算をこなす能力があり、正答率は8割近くに達したということです。
 2匹のマカクザルを使って、スクりーンの前に座らせて画面に複数の点(9個以内)を表示し、その画面を消した後で、異なる個数の点を書いた画面を見せます(上の図のような具合)。
 その後、3枚目の画面として、先の2枚の点の総和となる個数の書かれた画面と間違った総和の画像を同時に見せ、答えを選択させます。
 数日間の空連を行った後では、いずれのサルも正答率は76%で、同じテストを大学生にさせたところ正答率は94%だったそうです。 
 
 「サルたちは、単に数を数えたり、数字の順序を覚えたりできるだけではなく、頭の中で足し算をすることもでき、しかも、単に足し算ができるだけではなく、大学生とほとんど変わらないほど優秀だ。」などと新聞には紹介されましたがそうなのでしょうか。
 数字の足し算といっても一桁の数同士なので、組み合わせは81通りで、九九のように結果を暗記させたのではないかと言う人もいますが、訓練は一部の数字だけで行い(たとえば偶数だけ)、テストのときは訓練で使わなかった組み合わせを使っているようなので、暗記の結果ではないようです。

 それより、一桁の数字の足し算で、大学生の正答率が100%でなく、94%というのは一体どういうことかと疑問を持つべきでしょう。
 いくらアメリカの大学生のレベルが低いからといって、一桁の足し算の成績が94点というのは不思議でしょう。
 実はこの計算は、一、二、三と言葉を使って数えることを大学生には禁じています。
 サルは言葉を持たないので、サルと同じように言葉を使わないで数を読取り、計算させようと条件を近づけているのです。
 アラビア数字の一桁の足し算をさせたというわけではないのです。

 スクリーンに表示される点の数が四つ以内なら、表示時間が二十分の一秒程度でも人間は数を瞬間的にとらえられますが、それ以上になると点一個につき四分の一秒程度時間がかかります。
 上の図で数字を示す点が表示されるのは0.5秒となっていますが、表示される点の数が7個以上になれば、言葉で数え終えないうちに消えてしまいます。
 大学生の場合は、規則を破って言葉で数えようとすると、数え切れないで正答できないこともあるという仕掛けになっているのです。

 この実験は言葉を使わないで数を把握し、計算をするというような能力がサルや人間が共有していることを確かめようとしたもので、言葉を使わない場合はサルと人間と能力の差があまりないということを示しているのです。
 たとえば下の図のように、二つの棒の長さを足した長さを答えるというようなアナログ的な問題なら、言葉を使わないのでサルも人間も同じ条件で考えるので、成績もさほど変わらないでしょう。