60歳からの視覚能力

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原因と結果の取り違え

2007-02-17 22:43:28 | 視角と判断
 図Aでは斜めの線は同一直線状にあるのにつながっていないように見えます。 右上の線は左下の線の延長上より上にあるように見えるのです。 そのように見える原因について、心理学には鋭角を見ると角度を広げて見ようとする体という説があります。 尖ったものを嫌う尖端恐怖症とか、鋭角恐怖症のようなものによって、鋭角を押し広げて見ようとする心理が働くからというのです。  ためしにB図のようにもとの線を赤線のように角度を広げれば、はっきりと上の線と下の線が離れているのが見えるので、尖端恐怖症説は当たっているように感じます。 ところが本当に鋭角を見たら実際より大きな角度に感じるのかどうか、ということは説明されてはいません。 むしろ、二本の斜めの線が離れて見えることから、角度が広がっていると推測されるので、原因と結果が逆になっているのです。  A図では斜めの線を垂直の帯が覆っているのですが、同じ関係で、C図のように垂直線を斜めの帯で覆って見るとどうでしょう。 この場合は上の線も下の線も垂直に見えますから、鋭角を押し広げるような見方はしていないことがわかります。 もし鋭角を押し広げて見るとすればD図のように帯は相当広く見えるようになってしまいますから、鋭角は拡大されてはいないのです。  同じ角度で交差しながら、A図では直線がつながって見えないのに、C図ではつながって見えるのはなぜでしょうか。 鋭角を押し広げてみてしまうという予測はD図を見れば引っ込めざるを得ないでしょう。 そこでもう一度A図とC図について、交差している部分を見ると、直線は帯と接する部分で帯に吸着するように曲がって見えます。 その結果A図では右上の線の場合は接点が実際より少し上に、左下の線では接点が実際より少し下に見えます。  その結果をよりわかりやすくしたのがE図で、右上の線は少し上の赤線に近づいて見え、左下の線はすぐ下の赤線に近づいて見えるため、二本の直線はつながって見えず、平行に見えるのです。 C図についても同じように直線がずれて見えたとしても、上下の二本の線が垂直であることは変わらないので矛盾はありません。  この錯視図は、線が交差している部分に注目することから起きるもので、船の両端を同時に注視すれば解消されます。 C図のように垂直線であれば線の両端を注視するのは易しいのですが、A図のように斜めの線だと難しく、どうしても交差する部分のほうに眼が行ってしまい、錯視するのです。 見るときに顔を直線と同じ向きに傾ければ、C図のように直線に斜めの帯が覆う形となるので錯視を解消することが出来ます。
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