60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

グループ効果による見え方

2007-02-04 23:28:00 | 視角と判断

 「日本のわざと美」というポスターを見たとき、一瞬何のことだろうかと戸惑いを感じました。
 「日本の技と美」という意味なのでしょうが、「技」と書いたのでは伝えられないものがあると思ってわざと「わざ」というひらがなにしたのでしょうが、普通の人には少し抵抗のある表現法ではないかと思います。
 「日本」と「美」はいずれも音読み語つまり、漢語あるいは漢字語なのに対して、「わざ」は和語なのでひらがなで書くほうがよいとも理屈づけられますが、普通の感覚では「技」にするのがわかりやすいでしょう。
 簡単な名詞は漢字で書くというのが習慣になっているので、文字を読む場合、漢字を中心に文字列をグループ化してとらえていこうとするのが普通です。
 文字を読むときの視覚体制は、漢字を中心に文節をとらえるようになっているので「わざと美」という風な書き方に戸惑いを感じるのです。

 上の左の図でA、B、Cはみな同じ濃さの灰色で、Bがやや濃く感じるにしてもあまり違いを感じません。
 ところが右上の図のようにこれを折り曲げた図を作ると、AはBやCに比べると手も薄く感じます。
 このように見え方が劇的に変化したのは、折り曲げた形に見えるために、個々の四辺形は縦の方向にグループ化されているように感じます。
 そのためAは暗い四辺形のグループの中で相対的に明るく感じ、B、Cは明るいグループの中で相対的に濃く感じるのです。
 
 こんどは折り曲げ方を変えて横に折り曲げた場合を描いたのが右下の図です。
 今度は平行四辺形が横にグループ化されているので、AとBは同じグループに入ってきますから、同じ濃さに見えることが確かめられます。
 これに対して、Cは別のグループに属し、A,Bよりは暗いグループに入るので相対的にやや明るく見えます。
 同じ色の濃さのものが、グループ化によって見え方が劇的に変わるのです。

 右の図形での見え方は、折れ曲がった紙をイメージするために起きる見え方で、普通の視覚体制でおきる常識的な見え方です。
 ところがこれらの見え方は絶対的なものかというと、そうとばかりはいえません。
 たとえば、これらを壁に貼り付けられた平行四辺形のタイルだと思ってみれば三つの平行四辺形と思ってみれば、三つの平行四辺形は同じ濃さに見えます。
 実際に平行四辺形のタイルを壁に貼り付ける作業をイメージのなかでやってみると、AとB,Cは同じ濃さであると実感できます。
 右上の図上から三段目の列を左から横にタイルを順に張っていくことを想像すると、AとCは同じ濃さに見えてきます。
 どのような見方をするかによって見え方はたしかに違うのです。