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錯視理由を脳が後付け

2007-02-10 23:53:53 | 視角と判断

 左の図ではAのほうがBよりも黒く見えますが、これは同じ濃さの灰色です。
 いくら見てもそのようには見えない、Bのほうが白っぽく見えると誰でも思うのではないでしょうか
 これについて心理学では次のような説明をしています。
 「図は市松模様の盤でAは模様の黒い部分、Bは白い部分になっていて、右の円筒の影のためにBは黒っぽく見えるけれども、もとは白であると脳が判断するのでAより白っぽく見える」というのです。
 つまり脳がBは実は白い色だと思っているのでAよりも白っぽいと錯視するというふうに説明するのです。

 いかにももっともらしいのですが、少し考えてみると奇妙な説明です。
 AとBを見比べてBのほうが白っぽく感じるのは、全体が市松模様で、Bは白い部分に当たると考えるからではありません。
 単純にAより白っぽく見えたのであって、何も考えなくても白っぽく見えるのです。
 脳がBはもとは白だから白っぽく見てしまうというのは後付けの理由なのです。

 ためしに右の図のように円筒の部分を取り除き、いくつかの四辺形の色を変えてみてもやはりBのほうがAより白っぽく見えます。
 この図では全体が市松模様になっているわけではなく、Bが実は白いのだということは判断できません。
 さらにBに注意を集中して見続けるとBの色は濃く見え始め、Aと同じ色に見えるようになります。Bが白いということを知っていると言うなら、注視をすることによって白く見えるはずなのに逆に黒く見えるようになるのです。

 AとBの見え方が違う理由をもとめるとすれば、Aは4辺に接する部分が白っぽく、Bの四辺に接する部分は黒くなっていることが原因だと考えられます。
 つまり周りの色によって見え方が変わるのです。
 「朱に交われば赤くなる」という言葉がありますが、朱に囲まれればピンクも白く見えるのです。
 ガリバーは小人国に行けば巨人に見え、巨人国に行けば小人に見えるのです。

 下の図は市松模様の上に影を落とした様子を示したものですが、影が濃いか薄いかによってBの見え方は違うのですが、ぶぶんてきにはAよりも黒っぽく見えるところもあり、白っぽく見えるところもあります。
 もとが白っぽければ、影が当たっても白っぽく見えるとは限らないのです。