60歳からの視覚能力

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無意識の見方

2006-04-09 21:19:18 | 視角能力

 図aとbの横線は同じ長さなのですが、bのほうが長く見えます。
 心理学でよく紹介されるミュラー.リヤーの錯視という現象です。
 長さの差を感じる度合いは幼児と高齢者が高く、青壮年者は比較的には低いということです。
 子供は視角能力がまだ発達していないので、横の軸線だけを切り離してイメージすることが出来ず、また高齢者は視角能力が衰えてくるので、やはり分離させてイメージすることが出来ないためだとされています。
 
 矢羽根がついているために、長さが違って見えるのだから、横線だけを切り離してイメージできれば同じ長さに見えると言うのは事実でしょうが、長さが違って見える原因はここでは示されていません。
 
 c図はaとbを直交させ、軸線の線端に接する円を描いています。
 普通に見るとこの円は縦長の楕円に見えます。
 そうすると、やはりbがaより長く見えるために円が楕円に見えるのだなと思います。
 しかし、円が楕円に見えるのは、無意識のうちに円の外に出ている矢羽根の部分を見ているためです。
 
 d図はc図と同じものですが、円の左右に小さな円形が描かれています。
 この左右の円形を二つとも同時に見るとどうでしょうか。
 まん中の大きな円は縦長の楕円には見えず、円かあるいはやや横長の楕円に見えてきます。
 つまりc図を見たとき縦長に見えたというのは、無意識のうちに偏った見方をしていたためなのです。
 c図の場合は、視線が左右については円の内側に留まり、上下については円の外側にまで向くので上下縦長に見えるのです。
 ところがd図のように横に視線が向くようにしむければ、見え方が変わってしまうのです。
  ハエを使って眼の動きを観察した実験では、a図は矢羽根の内側に、b図では軸線の外の矢羽根の部分まで視線が向けられたそうですから、ハエにとってもbの軸線のほうが長く感じられたのではないかと推測されています。

 aとbを比較するといっても、同じ見方をして比較しているわけではないのですから、同じ長さに見えないとしても当然だということになります。
 c図でもd図でも、円の中心(軸線の交点)に注意を向けてみればしばらくすると、円が縦横等しい真円に見えてきます。
 この場合は上下あるいは左右に視線が偏って動かないからです。
 注意の向け方とか、視線の向け方をかえれば見え方は変わるのですから、年をとったから視角能力が落ちると必要以上に思い込むことはないのです。
 ものを見るときに、無意識のうちに偏った見方をすることがあるので、自覚して修正すれば視角能力を向上することが出来ます。