60歳からの視覚能力

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二次元的に見る

2006-01-14 22:41:10 | 眼と脳の働き
 片目で見ても遠近感はあります。
 片目で見るときでも、遠いところを見るときと、近くを見るときとでは、自動的に焦点距離を変えて見ているので遠近感はあります。
 ところが片目で同じ距離のものを二箇所同時に注視すると遠近感がなくなり、視界が平面的になります。
 たとえば、左の図のように顔の近くに指を立て、片目で両方の指を同時に見ます。(片方の指を見ながらもう片方の指を見る)
 そうすると前方に見えるものは指の間に挟まれているように近寄って見え、遠近感が失われて見えます。
 
 二点を同時に見ると眼の焦点距離が固定されるため、見えるものが同じ距離にあるように見えます。
 普通に見ているときは眼が動いていて、見るものに合わせて自動的に焦点距離を変えているのに気がつかないだけです。
 老眼になれば眼の調節範囲が狭くなるので、ある程度近くのものはぼやけてしまいます。
 それでも、まったく焦点距離が固定されるわけではありません。
 もし固定されてしまえば見るものの距離がちょっと変わるごとにメガネを変えなければならないので大変不便になります。
 焦点距離の調節機能が壊れたカメラで物を写そうとするようなもので距離によって眼を近づけたり遠ざけたりするか、眼の焦点距離のところに物を持ってこなければならなくなります。

 焦点距離を動かさないで見ると平面的に見えるのですが、写真は平面に写されているのに立体感があるように感じられます。
 これは陰影などから奥行きを脳が感じて自動的に焦点を変えているためです。
 焦点を動かさないようにして見ると、立体的に見えた写真も平面的に見えます。
 心理学に出てくる錯視図の多くは奥行き感に原因がある場合は焦点を変えて見ているのに気がつかないだけで、実際は錯視ではないことが分かります。

右脳で見ているか

2006-01-14 00:14:52 | 眼と脳の働き
 絵を描くということは、三次元のものを紙という二次元の平面に写すことなので難しいものです。
 見たとおりの遠近感を表現するために画家たちがいろんな工夫をしてきています。
 原理的には透明なガラスに格子状の線を引いておき、ガラス越しにものを見て、輪郭線と格子状の線との交点をつないで輪郭線を描くものです。
 「右の脳で描け」という本では、頭の中に格子状の線の入ったガラス板をイメージし、その中央の点に片目で焦点を合わせ、イメージ上のガラス板越しに見える像を紙に描き写すという方法を提案しています。
 片目を閉じ,片目で中央の点を見ながらものの輪郭と格子状の線との交わり方を紙に写してゆくのです。
 
 上の図で二つの正方形は同じ大きさですが、右側の正方形は立体感があり、右側のほうがおくにあるように見えて、狭まっているように見えます。
 左側の図は、格子状の線の入ったガラス越しに同じ正方形を見た様子で、片目を閉じ片目で中央の黒点を見ながら四辺を見ると左右の長さが同じの正方形に見えます。
 格子状の線はガラス板という平面状にあるので、ものの輪郭が格子状の線と重なって見えるところを写していけばよいということになります。
 このとき三次元のものは遠近感がなくなり平面的に見えますが、格子状の線を取り去り、両眼で見れば立体的に見えるようになります。

 三次元のものを見るということは、見る部分によって眼からの距離が違うので、気がつかないうちに焦点距離を変えながら目を動かしてものを見ています。
 ぼんやりものを見ているときは、眼が動かないで、焦点距離が変わらないので見えているものは遠近感が失われているのが分かります。
 平面画像は、眼からの距離がほぼ一定なので、焦点距離を固定した見方ができればよいということです。
 そうするとこれはかならずしも右脳で見るということに限ったことでないのではないかと思います。

 片目を閉じてみるのは右でも左でもよいのです。 
 どちらでも同じように見えますから、右の脳だけで見ているということはないでしょう。