前回のブログでは、三重大学で具体的になされた夥しい数の改革についてご紹介しました。
僕は2009年の3月19日に学長最終講演をさせていただいたんです。その時のタイトルが下のスライドです。これは、三重大学の構成員にはPDCA自己申告書なるものを提出していただくようにお願いしたのですが、言い出した学長自らもしないといけないわけで、この最終講演をPDCA自己申告書にさせていただいたというわけです。
そこでは、学長としてやったことと、そしてやり残したことを正直にプレゼンしました。
下のスライドは最終的な僕の学長としての総括ですが、法人化当初策定した三重大学のミッションの実現について、やり残したことも多いとは言え、おびただしい数の新しい取り組みを行い、ミッションに掲げた「地域に根ざし」という点についても、「世界に誇れる独自性」という点についても、また「人と自然の調和共生」という点についても、それなりの成果をあげたと自分なりに感じていることをお話しました。そして、それはいくつかの項目で数値として表れています。
そして、最終的な僕に対する第三者による評価、つまり三重大学の国立大学法人評価における順位は86大学中14位というものでした。
この14位という順位を聞いて、僕としては、ほんとうにほっとしました。14位で自慢できるわけでもないのですが、もし、低い順位だったら、三重大学に顔出しすことはできませんからね。三重大学の歴史にも永久に残されます。
学長(トップ)は結果責任が問われて、言い訳ができない存在ですからね。
この法人化第1期の評価で低い順位だった大学の学長さんのお気持ちをお察し申し上げます。自分がもしその立場であったことを考えると、ほんとうにお気の毒になってしまいます。
もっとも、法人化の中期目標期間の途中で学長を交代する大学では、責任の所在がはっきりしないことになります。やはり、中期目標期間に学長の任期を概ね一致させ、学長自らが中期計画の策定を行い、そして、その達成にも結果責任を負うというシステムが最も良いと思います。
ただ、三重大学がしたような改革努力は、別に三重大学に限ったことではなく、ほとんどすべての国立大学でなされ、大きい大学も小さい大学も、その与えられた資源の下で最大限の成果を生み出す努力をしました。
これは法人化をしたことによる良い効果であると思います。
しかし、一方では、法人化そのものとは別の政策とされているのですが、基盤的な運営費交付金が減らされ続けて、教職員数を減らしつつ、このような改革を進めなければなりませんでした。大学構成員が疲弊するのも、もっともだと感じ取っていただけますかね?
そして、これだけみんなが努力をしているにも関わらず、一部の方々かも知れませんが、今でも国立大学ががんばっていないかのように批判されるのは、いったいどういうことなんでしょうかね?そして、がんばったご褒美はさらなる予算や教職員の削減ということになります。
このような負の部分も踏まえて、次回は、国大協における僕の話の後半部分「政策・政治リスクにどう対応するか?」というテーマに移ります。
(このブログは豊田個人の感想を述べたものであり、豊田が所属する機関の見解ではない。)
結局,学長個人だけではなく大学構成員が「うちの大学の特色は〇〇だ」という共通理念を持って大学を運営していくしか無いと思われます.
これは、財務省の都合です。ひいては、政権の国家予算配分方針の都合です。
つまり、財務省および政権が納得する理由付けが必要です。おびただしい数の総花的スライドよりも、彼らが納得する情報が必要なのです。
エントリ『三重大学の改革(大学改革の行方その12)』にある情報では、投入資金に対するアウトプットの数量的分析が見られません。
これでは、エントリ『日本再生戦略の重要な数値目標(大学改革の行方その11)』にある、『指標としてトップ10%論文がいいのか、トップ1%論文がいいのか』という判断以前に、トップ10%論文1報あたりのコストはいくらで、トップ1%論文1報あたりのコストはいくらか、という実績がなければ、財務省はいくら準備したらよいのか、政府は財務省にいくら拠出させるよう指示したらよいのか判断がつきません。
そして、エントリ『選択と集中の罠(大学改革の行方その10)』で言及されたスライド資料(科学技術政策研究所のホームページに掲載;http://www.grips2012-symposium.org/univ_benchmarking2012/program.html)のように、全学術分野での統計データと、臨床医学論文のみでの統計データが混在するのでは、臨床医学以外の分野での費用対効果について、何の示唆もなされませんし、財務省・政府が判断する材料が得られません。分析において科学技術政策研究所のお力添えを得るのは必要とは思いますが、それは費用対効果が数値として出ているものである必要があります。
さらには、三重大学の成果が三重県という地方自治体に還元されている分は三重県が負担すべき、という国の論理にも対抗せねばなりません。地方分権とともに地方交付金の適正な分配を求めるにあたっても、予算規模について費用対効果の数値的根拠が必要です。一方で、地方大学でも『世界トップレベルの研究者が活躍している』という主張をするならば、前述のようなトップ10%論文1報あたりのコストはいくらで、トップ1%論文1報あたりのコストはいくらか、という議論に集約されます。
これらは、大学への交付金総額をアウトプットされた論文数で割れば済むものです。そういう単純なものが、財務省や政府には求められているのです。
歳出~文教及び科学振興費~ | 発展編 | 税の学習コーナー
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/hatten/page06.html?non
「うれしい」田中文科相、山中教授に祝福の電話 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121008-OYT1T00737.htm
> 田中文部科学相は8日夜、ノーベル生理学・医学賞受賞が決まった山中伸弥・京都大学教授に電話し、「わがことのようにうれしい。役所(文科省)を挙げて、内閣を挙げて、今後も一生懸命支援させていただく」と祝意を伝えた。
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> この後、田中氏は文科省で記者団に対し、「人類の幸せに日本の研究者が貢献していることはすばらしい。国の予算に強弱を付けて、ここに特化するという国家の意思をしっかり反映したほうがいい」と述べ、iPS細胞研究の分野に予算を重点配分すべきだとの考えを示した。
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>(2012年10月8日22時07分 読売新聞)