前回のブログ「日本の生産年齢人口あたり論文数は第何位か?」をお読みいただいたみなさんの中で、何人かの方々が、では論文の質(≒注目度)についてはどうなのか?ということをつぶやいておられますので、高注目度論文数についても生産年齢人口あたりで計算したグラフをお示しすることにします。また、研究者数や研究費との関連はどうか?ということもつぶやかれていますので、それについて以前にお示ししたグラフを再度お示ししておきます。新たに僕のブログを読んでいただいたみなさんが、以前の僕のブログまで遡ることはとっても困難ですからね。
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5)日本の生産人口あたり高注目度論文数について
図表III-151に、学術文献データベースであるInCites™における相対インパクト(impact relative to world)の推移を主要国で示した。相対インパクトは、その国の論文あたり被引用数を、世界における論文あたり被引用数で割った比率である。つまり、この値が「1」である場合は、世界の論文の被引用数の平均ということであり、1以上の場合は世界の平均以上に引用がなされているということであり、1以下の場合は世界の平均以下の引用しかなされていない、ということを意味する。なお、InCites™、すなわちWeb of Scienceというデータベースに収載されている学術誌は、管理者がある基準でもって取捨選択をした学術誌であるとされ、世界平均とはいっても、ある程度質が担保された学術誌に掲載された論文の被引用数ということになる。もちろん、和文で書かれた論文のほとんどは、この対象になっていない。
なお、論文の「質」=「被引用数(注目度)」とは必ずしも言えないが、同業の研究者が引用に値するという評価を与えた論文ということであることから、ある面の「質」を反映している指標であると考える。本報告書では論文の「質」≒「注目度」として論じる。
図表III-151を見ると、1990年頃までは、米国が常に被引用数トップであったが、2000年頃からヨーロッパ諸国の被引用数が相対的に上昇し、米国は相対インパクト1.4という高い値を維持しているものの、他国に追い抜かれ、現在12位となっている。
日本の相対インパクトは以前は0.8程度であり、世界平均よりも被引用数が少なかった。そして、1990年代に多くのヨーロッパ諸国が被引用数を増やした流れについていけず、他国との差が開いた。日本の相対インパクトが徐々に上がり始めるのは2004年頃からであり、現在ようやく世界平均の1に達したところである。
日本は中国、台湾、韓国よりも相対インパクトが高い値であるが、これらの新興国はいずれも急速に相対インパクトを高めており、日本に近づきつつある。
日本の相対インパクトの順位は、今回調べた範囲では第26位である。
次に、科学技術指標2013の資料のデータより、高注目度(Top1%補正)論文数について作図した図表III-152を示す。Top1%補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位1%に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/100になるように補正を加えた論文数である。この指標は論文の「質×量」を反映する指標であると考えられる。
2000-02年から2010-12年にかけて、日本の増加は海外諸国に比較して少なく、第10位となっている。前節では通常論文数について日本は第5位であることを示したが、この結果は、日本の研究面での国際競争力の低下が論文数だけではなく、論文の注目度(≒質)も伴っていることを示唆している。
これを人口あたりで表現したグラフが図表III‐153である。
科学技術指標に示された国の中では日本は第21位であり、ポーランドとほぼ同じ値である。もし、これ以外の国についても調べることができれば、日本の順位はさらに低くなるものと考えられる。
生産年齢人口あたりで表したグラフが図表III-154であるが、日本の値は多少高くなっているものの、順位は変わらない。
日本の研究(論文産生)面での国際競争力は、量にとどまらず、注目度(≒質)においても低下している。
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さて、ここで、以前にお示しした、OECDの公開データにもとづいた研究者数(研究時間を考慮にいれたFTE研究者数)や公的研究資金についての一連の分析結果を再掲しておきます。これは1月28日の国立大学協会でプレゼンをした時のスライドの一部です。
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このような国際的なデータ分析から、日本が研究(論文産生)面の量および質について国際競争力を喪失した主な要因は次のようなことであると考えています。