『嫌われ松子の一生』、映画館で観ました。
平成13年、荒川の河川敷で松子が遺体で発見される――。昭和22年、福岡県で
中学教師として働く川尻松子は、憧れの同僚・佐伯からもデートに誘われ人生
順風満帆。ところが修学旅行で生徒がおこした窃盗事件が原因でクビになり、
家を飛び出しソープ嬢に。松子の人生が狂い始める‥‥。
苦しいほどの“切なさ”と、沸き立つような“楽しさ”と、遠い昔を思うような
“懐かしさ”が入り混じった不思議な気持ち‥‥。『下妻物語』の中島哲也監督
だからといって、同じようにハイテンションで突っ走る?、フザケたジェット
コースタームービーと思ったら痛い目にあう。例えば、コミカルとシリアスの
バランスからしても、『下妻~』が7:3としたら、今作『嫌われ松子~』は
せいぜい4:6くらい。まず片平なぎさネタで一発、最初の笑いでオイラの心を
鷲づかみ。一転、荒川土手のエピソードにキュ~ンと郷愁感、妹の健気な笑顔に
心を洗われ、怒涛のホットケーキ話でジーンと涙、オイラの胸を締め付ける。
でもって、そんな“理詰め”の展開に感心させられたかと思えば、一方で“感性”の
映像に圧倒されっぱなし。そのビジュアルは、賑やかにして華やかな夢心地、
往年のハリウッドミュージカル映画のそれのよう…。日本映画の“線の細さ”
なんて微塵もない。そして、普段はタブーとされる、暴力とSEXとCGと大音量の
音楽をじゃんじゃか、じゃんじゃか取り入れながらも、それを全く嫌味に感じ
させないあたり…、ちょっと真似しようと思っても真似できないセンスだね。
その名は《中島哲也》、久しく日本映画でこんな天才、見たことない。
さて、映画は、あの名作『市民ケーン』を思わせる、冒頭に提示された
“主人公(ヒロイン)の死”を出発点として、何故そのような結果に至ったのか??、
その波乱に満ちた人生の歴史を振り返っていく。結局、彼女は、世の中の全ての
不幸を抱え込んで醜くなり、自分はといえば人に愛を捧げ尽くして死んでいく。
その“美しさ”ゆえに傷付いて、その“純粋さ”ゆえに汚れてしまったんだ(涙)。
他人(ひと)は、そんな松子を見て笑い、蔑(さげす)むかもしれないが、
それは表面的な彼女しか知らなくて、彼女が抱える本当の悲しみや、本当の
孤独について分かっていない…。いや、分かろうとしなかったから‥‥(涙)。
きっと、彼女はこの世の“神”だったに違いない。だって、彼女が登る階段の
先には、ほら、“白い光”が‥‥。それは“地上の苦しみ”から解放され、遥か
“天国”へと続いているんだもの。
TB,&コメント、どうもです。
うん、結論から言ってしまうと、
残り半年以上の残す今の段階で、
今年の邦画ベストワンになるに違いない‥‥
そんな凄みのある作品でした。
ホント、映画の2時間10分、
全く時間の長さの感じなかったです。
ぶっちゃけ、『下妻~』はノリと勢いに圧倒されたけど、
良い意味で今作は、前作のイメージを壊してくれた。
次(次回作)も、何かビックリするようなことで
やってくれそうな気が……今から楽しみだね。
ご意見、同感です。
サスペンス劇場の片平なぎさが真顔で演じていたのが最高でしたよね。
ラストの松子は神々しかったと私も思います。