監督:松本人志
出演:松本人志 、竹内力 、UA 、神木隆之介 、海原はるか 、板尾創路
『大日本人』、映画館で観ました。
ひっそりと平凡に暮らす大佐藤は、6代目大日本人として防衛庁から不定期に
依頼される仕事で生計を立てていた。しかし以前とは違い、大日本人に対する
世間の目は厳しく、活躍の場も次第に減っていた。そんなある日、いつものように
防衛庁の命を受けた大佐藤は、電変場に向かいある儀式を行うのだが‥‥。
松本人志の映画だから、さぞかし笑えるだろうと思ったら大間違い。あやしい??
“ドキュメンタリー番組”風の作風は、時おりシュールな笑いを挟みながらも、
あからさまなギャグは一切無し。劇場内は序盤からクスクス笑いが精一杯で、
一度もドッカーンと大爆笑が湧き上がる場面はなかったかな。ただ、オイラ的には
この映画、コメディアンがお遊びがてらに作っただけで、全く見所が無い映画だとは
思わない。むしろ、この映画に“隠されたメッセージ”を読み取ることで、普段TVの
ブラウン管で見ることのない、松本人志の“別の一面(考え方)”が見えてくる。
ならば、その“隠されたメッセージ”とは何ぞや??、思うに、それは『大日本人』の、
その名の通り、“日本人としてのあり方”ではあるまいか。映画主人公の大佐藤が
巨大化し、“大日本人”となるためには、電変場に行って体に電流を流さなければ
ならない。だが、そこで大佐藤が拘り続けていることがある。それは先祖代々続く
“伝統の、ある儀式”を執り行うこと。序盤の展開では、その儀式が“彼にとっての
必然”かと思われたが、後のインタビューで、仮に儀式が無くても“彼の巨大化”には
何ら支障がないことが分かってくる。問われると彼は言った、「それは“気持ちの
問題”だ」と。そうだ。気が付けば、今まで我々の身の回りにあった伝統も、格式も、
次々に簡略化され、合理化されていく。更に、押し寄せてくる異国の文化によって、
日本人は自国の文化を捨て、急激に“アメリカ化”が進んでいる。今、我々は
“日本人として”何か大切なものを失っているのではないか。かつて日本人は何より
「伝統」と「格式」を重んじる民族だったのに…。そして、それが我々の“日本人らしさ”
であったはずなのに‥‥。作品中でそれを象徴する、こんなシーンがある。4代目の
祖父の時代には一世を風靡し、ゴールデンタイムを張っていた“大日本人”のテレビ
番組。しかし、6代目の現在は“深夜2時40分”の枠に飛ばされた挙句に、人々から
「大日本人(=伝統、格式)なんて必要ない」とまで‥‥。
一方、ラスト10分間に込められた“アメリカ批判”のメッセージは、更に痛烈だ。
それまでのCG主体の対決シーンから一転、実写へと模様替えしたその場面は、
赤い鬼の怪獣に怯えた大日本人が、そそくさと都内各所を逃げ回っている。そこへ
空から突如して舞い降りてきた5人のアメリカンヒーローのファミリーたち‥‥。
次の瞬間、彼らは“数と力”に物言わせ、赤い怪獣に“情け無用の総攻撃”を
起こした後、何とそのパンツ(=プライド)まで剥ぎ取ってしまう。すると、今度は
ビルの陰に隠れた大日本人を見つけ、「お前(大日本人)もここに来て一緒に戦え」と。
やむなく大日本人は、とどめのビーム光線で、ヒーロー達と手を合わせるが、
彼がその手を離しても“光線の威力”は全く変わらないのに。つまり、大日本人は、
アメリカンヒーローたちに無理矢理(リンチへの)参加を強制され、“(戦争の)
共犯者”にさせられたのだ。
では、正直なところ、この映画だけを観て松本人志に“映画監督としての才能”が
あるかどうかなんて分からない。とにかく次の作品を観ないことには…。ただ、「戦争」を
このように描いたのは初めてだし、“彼ならではの視点”を垣間見る。少なくとも、
彼が“非凡なセンス”を持った才人であることだけは間違いない。
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