肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『歓びを歌にのせて』、観ました。

2006-07-10 21:17:08 | 映画(や行)

歓びを歌にのせて ◆20%OFF!

 『歓びを歌にのせて』、観ました。
天才指揮者として世界的名声を得たダニエルは、過酷な公演スケジュールと
プレッシャーの中、病に倒れ第一線を退く。ぼろぼろの心臓と深い孤独を抱えて、
彼は故郷の小さな村に戻り、音楽にはもう関わらないと決めていたが、ある日、
地元の聖歌隊の指導を依頼される…。
 タイトルからして一目で分かる“感動作”、普段からこの手の映画が苦手な
オイラとしては、大きな覚悟を決めて観たのであるが(笑)、過剰なまでの
“良心”と、出来過ぎ感ある“美談”の連続攻撃、やっぱりどうもこそばゆい。
斜(はす)に構えて見てしまう、こんなオイラが悪いのか…、斜に構えて
見せてしまう、そんな映画が悪いのか…(笑)、とりあえず、映画は泣かせ所
だけはふんだんに用意されていると思うので、アナタの好みのよって観るか
観ないかは決めたら良い。まぁ、二度三度と繰り返して観るような“深み”は
ないけれど、演出は基本にとても“忠実”で、“セオリー通り”の無難な作り。
例えば、映画序盤、(失意の)主人公が初めてレナに会う場面で、彼女が
“天使の看板”の前から現れるのは、後に彼女が主人公にとって“希望の存在”に
なることを予感させる。そして、この映画の良い所は、(主人公たちが歌う)
“音楽の価値観”を、コンクールの勝敗や優劣によって決めるのではなく、
あくまでも、自分たちの音楽が聴く人を感動させたかどうか…、強いては、
音楽の素晴らしさとその可能性について、拘って描かれている点だ。もちろん、
『スウィングガールズ』的な痛快エンディングも悪くはないが、ここでは
いつまでも鳴り止まない拍手のように続いていく、この余韻が残る結末が
ピッタリだ。
 一方、観ながらどうにも気になってしまったのは、(映画の)時間内に
聖歌隊のメンバー、ほとんど全員を描こうとするあまりに、未消化のまま
完結していないキャラクターが目立つ。いつもメンバー内で孤立して、途中で
除隊してしまったオールドミスとか…、コンサートの打ち上げで、愛を告白した
同級生のお年寄りとか…。うーん、思うに、この映画で本当に描きたかったのは、
主人公とレナの“純愛”、夫の暴力に怯えて“新しい一歩”を踏み出せずにいた
妻ガブリエラの決断、“信仰(神)”に縛られ、がんじがらめになった神父と
その妻の関係、、その三組だけに絞っても良かったのでは??、その方が物語も
ごちゃごちゃせずに、スマートな仕上がりになったと、ボクは思うのだけど。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿