肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『世にも怪奇な物語』、観ました。

2006-02-18 20:20:05 | 映画(や行)

世にも怪奇な物語 ◆20%OFF!

 『世にも怪奇な物語』、観ました。
エドガー・アラン・ポーの怪奇小説を元に、フランスとイタリアを代表する
3大監督が競作したオムニバスホラー。ロジェ・ヴァディム監督『黒馬の
哭く館』、ルイ・マル監督『影を殺した男』、フェデリコ・フェリーニ監督
『悪魔の首飾り』の全3作品を収録。
 さすがエドガー・アラン・ポーの原作だけあって、単に怖がらせるとか、
単にハラハラさせるだけで終わらせない…、要所要所で“人間の本質”が
見え隠れする、一歩進んだ怪奇オムニバスだ。
 一話は、すべてを支配できると自惚れていたブルジョアの女王が、ある時
出会った孤高の王子に惹かれていくというお話。テーマを象徴するのは、
森に一人迷い込み、あやまって動物用のワナに足を捕られてしまった女王が、
偶然通りかかった男に助けてもらう場面‥‥つまり、それが意味するものは、
権力と財産とエゴでがんじがらめに縛られた王女を、一人の男が“自由”を
与え、今とは違う“別の生き方”を教える場面ではなかろうか。しかし、
突然現れた“大きな黒い馬”によって、その後の女王の運命が大きく変わって
いくのは、何とも皮肉で恐ろしい結末だ。
 二話は、善人とは言えない主人公が、その人生において悪事を働くたびに、
分身のような同姓同名の男が登場し、主人公の邪魔をするというお話。
思うに、人は誰しも「善」と「悪」との二面性を持ち、その対立する両者が
“微妙なバランス”の上で成り立っている。もしも、その片方が死ねば、
もう片方も死ぬ‥‥。人間とは、きっとそういうものに違いない。
 三話は、一言で「フェリーニらしい」と言えばそれまでだが、異国の地で
男が見る“狂気の世界”、少女の姿を借りた“悪魔の描写”など…、幻想的で
オカルティックな映像にただただ圧倒される。恐らく、このエピソードで
フェリーニは、故意に観る者を混乱させ、我らを主人公と同じ“悪夢”の世界に
引きずり込もうと狙っている。“観て考える”というよりも、“観たままに
体感する”映画なんだろう。
 映画を通しての感想は、三者三様にそれぞれ面白かったが、物語的には
一話の『黒馬の哭く館』、映像的には三話の『悪魔の首飾り』が気に入った。
あくまでもオイラの私見だが、順位的には‥‥三話 > 一話 > 二話かな。

 



最新の画像もっと見る