closer / クローサーソニー・ピクチャーズエンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
『closer/クローサー』、観ました。
舞台はロンドン。小説家志望の記者ダンは街で偶然出会ったストリッパーの
アリスと恋に落ち、同棲を始めるが、著書用の写真を撮ってくれたフォト
グラファーのアンナが気になり始める。その後、医師のラリーを加えた
男女4人の関係は更に複雑にもつれ合っていき……。
今、都会では“バーチャルな愛”が氾濫し、“人の絆”は希薄になっている。
恋愛はどんどん“手軽”になり、相手の顔さえ見えぬまま、甘い愛の言葉が
囁(ささや)かれる。いや、だからこそ、“真実の愛”が見え辛くなって
きているのも確かだと言える。この映画では、そんな都会人たちが織り成す
“愛のカタチ”を、「真実」と「嘘」との微妙なバランスの中で描いている。
互いの肌と肌が触れ合っても、心には触れられない。服をすべて脱ぎ去っても、
その心は包み隠している。ここに登場するキャラクターは、それぞれ……
医師と女流フォトグラファー、作家志望の新聞記者とストリッパー、、、
それらは人生の勝ち組と負け組にはっきり色分けされながらも、皆同じように
“孤独”を抱えている。だから、彼らは“自分の孤独”を忘れるために愛を求め、
“心の空白”を埋めるための相手を探す。彼らにさえ、それが“真実の愛”か
どうか分からないんだ。
それにしても、監督のマイク・ニコルズは、かつてのエネルギッシュで
ギラギラした演出とは対照的に、今作では何とスマートに洗練され、抑制された
演出をみせてくれることか。ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・
ポートマン、クライヴ・オーウェンといった人気スター揃い踏みの映画で
ありながら、個性と個性の激しいぶつかり合いはなく、むしろ、物語は
流れるように始まり、その静かなテンポを保ったままに消えていく‥‥。
また、あえて“時間的な余白”を作ることで、観る側の想像力を掻き立てる
時間経過も特徴的だ。近年のハリウッドにはめずらしい……いや、良い意味で
マイク・ニコルズ“らしい”作品に仕上がった。