肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ゴーストライター』、観ました。

2012-01-02 13:58:15 | 映画(か行)

監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリビア・ウィリアムズ
※第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)

 『ゴーストライター』、観ました。
元英国首相アダム・ラングの自伝執筆を依頼されたゴーストライターが、ラングの
滞在する孤島を訪問。取材をしながら原稿を書き進めていくが、次第にラングの
過去に違和感を抱き始める。さらには前任者の不可解な死のナゾに行き当たり、
独自に調査を進めていくが、やがて国家を揺るがす恐ろしい秘密に触れてしまう‥‥。
 (昨年)2011年最高のサスペンス映画にして、近年稀にみるポリティカル・
サスペンスの傑作だ。まず、先に断っておくと、ここにはアッと驚くどんでん返しも
なければ、それを見破る鮮やかな謎解きも存在しない。更に、犠牲者の死体を
見るのは冒頭の遠巻きからのワンショットのみ、猟奇的な殺人もなく、一滴の
血も流れない。ともすると人によって“地味で物足らない映画”に映ってしまい
そうだが、いやいや、そんなことはない。この上なくスマートで気品漂い、
ミステリーの面白さが凝縮された一本だ。最初はほんの些細な“好奇心”から
始まった。やがてそれが“疑惑”へと変わり、ついに“確信”へと…。細かな
プロットをひとつひとつ丁寧に積み重ねて作り上げていくプロセスは、まさに
“サスペンス映画の醍醐味”であり、円熟期に入ったロマン・ポランスキー
ならではの職人芸だ。また、抑制されつつも格調高い映像の中、閉ざされた
寒村の重苦しい天候に投影された人間模様と、微妙な駆け引きもこの映画の
見所の一つだろう。更に、初めてその地を訪れた主人公が味わう特有の感覚――
みる物、出会う人すべてが奇異に映り、周囲の中で自分だけが“浮いた存在”に
思われる――いわゆる、映画全体が“異邦人の視点”で描かれているのも
見逃せない。それにしても、主人公が事件の核心に迫れば迫るほど、ひたひたと
背後に忍び寄る黒い影が薄気味悪く、観る者の不安感を増長させる。と、そうかと
思えば、英国風の小洒落たセリフにニヤリとする。その、重厚なサスペンスに
時折みせる“ユーモアのさじ加減”は、往年のヒッチコックの映画を観てるよう。
そして、最後はフィルム・ノワール的な結末でこれまたニヤリ。普段は映画館で
エンドロールが流れると席を立つオイラだが、今作ばかりはどこか名残惜しく、
もう少しこのミステリアスで心地よい空気に浸っていたい、とそんな気持ちに
させられた作品だった。


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