幼い頃、毎年サマーキャンプで一緒に過ごしていた7人。
輝く夏の思い出は誰にとっても大切な記憶だった。
しかし、いつしか彼らは疑問を抱くようになる。
「あの集まりはいったい何だったのか?」
別々の人生を歩んでいた彼らに、突如突きつけられた衝撃の事実。
大人たちの〈秘密〉を知った彼らは、自分という森を彷徨い始める――。
親と子、夫婦、家族でいることの意味を根源から問いかける、
角田光代の新たな代表作誕生
重たいテーマだったな。
人間の生。命を扱う。産むという願いを叶えるため。女性の願望だったのかな。とも
産むことだけ。ほしい事だけに熱中し、「育む」が欠けていたんだろうと思う。
今思えば、親たちも若く考えが甘かった。と
それにしても、物語の父性の欠落による、ゆがみを感じた。
現代社会に於ける。欠落なのかも。
おい!男ども…どうした!そう…語りかけたくなった。
著者が女性だから、このテーマで描けるのだと思うが。
夫側に不妊の原因がある場合は、男の柔らかなプライドなり。そういったものが夫婦の絆に何らかの影響はあるのだろうなと感じる。樹里の育ての父親があわれだったし、他に出てくる男性達が緘黙であるのが痛々しい。
この世に男性と女性しかいないのだから、共同で子育てし、はぐくんで家庭というものがあると思っていたけれど。小説を読んでいると、不穏になることもある。
みんな自己満足の欲求のために、何か行動を起こす。理解を得られないようなら、話し合いすらせず、逃げる。
紀子だって。夫の束縛から逃げた理由を、話すことなく一方的に実家に逃避し。なにもわからずに妻に逃げられた家庭的な(すぐカッとなる性質は男の悪いところだが)夫が、哀れである。
なんでも出来て、人の気持ちを先読みして、反抗期もなく。さらさらと生きている弾。この男はいろんな意味でみんなを導いて行くが。弾のことは、誰も理解できないし、彼自身も人に求めはしない。究極の孤独。を感じる。寂しき男だ。
波留は、難病と闘いながらも。自分を確立し、歌いつづけ、人々にメッセージを残し、勇気づける。けして、楽な道ではないけれど。そうやって、健気に生きていく波留の生き方が、すてきだし、前向きで、ひたむきで好感が持てる。
賢人は、精神的に脆く、様々な女性と関わりながら、やっと落ち着ける場所(人)と出会えて安心したが。離婚してしまう紀子が、気がかりである。
母が最初からシングルマザーの道を選び、子育てには何もかも中途半端で育った紗有美が波留の歌のメッセージを汲みとり、やっとの事で人のせいにせず、自分を見つけて歩もうとしたところをエピローグだったのは、角田さんの優しさだなとホットした。