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田中啓文「ハナシがちがう!」

2008-11-20 | 小説

上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた、金髪トサカ頭の不良少年・竜二。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語の魅力にとりつかれてしまったのが運のツキ。ひたすらガマンの噺家修業の日々に、なぜか続発する怪事件!個性豊かな芸人たちの楽屋裏をまじえて描く笑いと涙の本格落語ミステリ。


若い世代でも、落語にちょっと興味を持つ短編ミステリーです。

主人公の竜二。親方の梅寿。姉弟子の梅春。キャラクターの魅力も惹きつけますし。

酔っぱらいでどうしようもない?師匠は、落語に対する実力は本格派。

ここに竜二は、いつの間にか、惹きつけられていきます。

古典落語の面白さも紹介しながら、何故か、死体が発見されたり、まあ、ミステリーですから…。その謎を解くわけですが、この師弟の掛け合いも徐々に良い感じにしっくりと…。

 

お題は…。「たちきり線香」「らくだ」「時うどん」「平林」「住吉駕籠」「子は鎹」「千両みかん」の7演目です。

この演目と中身がどう繋がるのか、落語とミステリーが絡まって、それがこの小説の魅力です。

 

桂文珍さんが解説で。この師弟を、まったく別世界の人間に見えるが、人を愛し、人の痛みを分かち合える熱き想いは、2人が深いところで通じ合っていると思われると書かれていますが。同感。

そして、落語も、人の世の喜怒哀楽を表現しているからこそ、ミステリーという人間社会の愛憎を描く、小説と重なり合うのだなと、思いました。

 

それにしても田中さんは、ジャズといい、落語といい、そのジャンルで小説を書いて、その趣味の深さに、驚かされます。



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