短歌は、私のなかから生まれるのではない、私と愛しい人とのあいだに生まれるのだ―新しい生命を授かり、育てる喜びに満ちた日々。一日一日変化していく子どもの成長を追いかけ、初めの一歩の驚きを、言葉の反射神経を使って三十一文字に刻む。子ども・家族・恋人、愛しい人と生命を詠った三百四十四首。
これ俵さんの歌集で一番好きです。
同世代の彼女から、20年も前に終わってしまった、出産、子育ての記憶を呼び覚まし、ああ、そうそう、私もこんな感じ、お腹の中の子を思い。生きているんだな。この命は。生まれてきて、こんなにも小さな、足の指をみて、サヤエンドウのまめのように並んでいるなとか。
父や母の孫を可愛がる様子は、なんだか、一世代ちがうけど、私としては、こちらの方が今後、近い将来夢見る姿かも知れない。
命の日々を、愛おしみながら、確実に、歌人の五感を研ぎ澄ませ、短歌のリズムに刻まれていく日々。
20代に終わってしまった、子育てに、私は、何かを感じながらも、この思い残すことはできなかったけれど、仕事と家事と子育てに追われた日々の記憶が、懐かしさとともに新鮮に甦ります。
彼女は最初から、シングルという子育てに挑んだわけですが、こんなにも素晴らしい母の残した歌は、大人になった子供が読んで、きっとこの思いは届くと思う。
何も言わなくても、言葉で表現できる人の優しさって、すごい。