銀右衛門文庫の経済動向

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5月29日

2012-05-29 | 経済動向
東京市場は売り買い交錯となりそうだ。スペイン情勢の悪化で欧州株が総じて軟調になるなど外部環境はさえないが、日本株は歴史的な安値圏にあるため下値は限定的だろう。東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は62.67%と、売られすぎとされる70%を大幅に下回り、2009年11月27日(57.68%)以来、約3年半ぶりの低水準となっており打診買いが入りやすいとみられる。日経平均の予想レンジは8550~8650円。

日経平均が4月上旬から調整色を強める過程で、2日続伸は何度かあったが、3日続伸は今回が初めて。少しずつ相場の流れが変わりつつあるのかもしれない。上値抵抗ラインとなっている5日移動平均(8604円)を明確に突破できれば、底入れ反転への機運が高まりそうだ。ただ、この日の上昇はファーストリ(+14.8円)、ファナック(+10.8円)と指数寄与度の高い一部の銘柄に依存したものに過ぎない。相場全体を示すTOPIXは小幅続落で、23日につけた終値ベースの年初来安値(721.57)を更新。東証1部で年初来安値を更新した銘柄数が289に達するなど、底割れが続いてる銘柄が多いのも事実。また、東証1部の売買代金は前日比19.3%減の7814億円と急減し、1月15日(7500億円)以来の低水準で今年3番目の少なさ。今夜の米国株式市場がメモリアルデーで休場となるため、ある程度の商い低下は予想できたが、相場が底入れ反転するには市場エネルギーの増加が期待されよう。

政局が混乱しているギリシャでは、週末に発表された4つの世論調査で、国際金融支援の見返りにユーロ圏諸国ならびにIMFと合意した緊縮財政堅持を訴える新民主主義党(ND)が、緊縮財政反対の急進左派連合(SYRIZA)を突き放してトップに立ったことが明らかとなった。これら世論調査から試算すると、総議席数300のうち新民主主義党(ND)と同じく緊縮財政支持の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の連立で161~166を獲得し、5月の総選挙での149を上回り過半数に達するとみられる。前週はギリシャのパパデモス前首相が同国はユーロ圏からの離脱の準備を検討しており、ユーロ離脱のコストが5000億~1兆ユーロに達するだろうとの見解を示したことでユーロ圏離脱への懸念が強まったが、パパデモス氏はギリシャには痛みを伴う緊縮策を実行する以外に選択肢はなく、さもなければユーロ圏からの脱退に直面しかねないと警鐘を鳴らしたものであり、緊縮財政堅持の政権樹立となればユーロ圏から脱退するリスクはかなり低下しよう。ただ、6月17日の再選挙まで半月以上もあるだけに、今後のギリシャ情勢にも細心の注意を払いたい。また、渦中のスペインでは、カタルーニャ州知事が「今年の債務借り換えに向けた選択肢が尽きつつある」として中央政府へ支援要請し、大手銀のバンキアも190億ユーロの支援を要請。足元では、S&P、ムーディーズなどからソブリン債や銀行の格下げが相次いでおり、信用不安が日増しに強まっている。これに呼応する形でスペイン10年債が売られ、ドイツ10年債との利回り格差は500bp超とユーロ導入来最高を記録した。スペインは2008年の不動産バブル崩壊以降の巨額損失で大打撃を受けており、今後もさらに評価損の計上を迫られる恐れがあるが、国際金融協会はスペインの銀行が抱える不良債権が最大2600億ユーロに膨らみ、760億ユーロの引当金積み増しを迫られる可能性があるとの見通しを示している。ギリシャ同様にスペイン情勢にも注意を払いたい。

前日の日経平均は前日終値を挟んでの攻防を続けたが、大引けにかけてやや強含んだ。アジア株高を好感した買いが入る一方、円高警戒感や欧州不安から上値は重かった。東証1部の値下がり銘柄数は1116(全体の66.5%)に達し、規模別株価指数は大型のみ上昇。国際優良株や資源関連株などが堅調に推移したほか、指数寄与度の高いファーストリ、ファナックが相場をけん引した。その一方で、増資による希薄化懸念でルネサスが急落し、その大株主のNECも大幅安となったほか、コンプガチャの全廃に続き、類似商法も取りやめると伝わったソーシャルゲーム関連も売られた。

日経平均株価は8593.15 +12.76円と小幅続伸。5日線(8604円)処を意識して、終日小動きの展開となった。RSI(9日)は前日26.2%→29.9%に上昇。直近高値をわずかに上回る動きであり、騰勢を強められるかが注目される。基本的には下値模索が続いている認識が優先されるが、1月から騰勢を強めた起点まで下げており、目先的には反発が続く可能性は高い。あすは下げ止まる転換線(8690円)を越えられるかが焦点だ。仮にダメ押しがあっても早期に深押しは想定しづらい。中期の200日線(8979円)は下げが続いており、短期的には同線や25日線(9066円)を上限にもみ合い想定とみられる。今後半月~1ヶ月程度かけて200日前の応答日株価が急速に下落する。この先株価が大幅に下げることなく、200日線などを意識してもみ合いを維持することができれば、同線は上昇に転じ、9000円台前半までの戻りが生じるシナリオはあろう。先週、週足では五週連続の陰線を形成。陰線でも直近2週に比べて比較的短いコマ足が意識できた。3月高値から九週目の調整を通過したことで、今週は反発に期待したいところだ。下値メドは、3/27高値10255円~4/11安値9458円までの下げ幅797円を4/11安値からさらに下げた8505円や、昨年11/25安値を起点とした上昇序盤で小さな三角もち合いを形成した中値8432円処、8270円処などがある。変化日は5月30日、6月6日、21日となる。

トレーダーズウエブより