常に斬新な切り口で、読者を驚かせたり、楽しませてくれたりする日垣隆氏ですが、本書はその中でも、もっとも読みやすく、高校生以上の人にお薦めしたい一冊です。
本当に情報があふれている時代ですから、やはり基本的なメディアのしくみや、知識人の生態などを知っておくことは大変重要ですね。すぐにワイドショー、ニュースショーの受け売りをしてしまう生徒が多いです。
メディア・リテラシーという言葉はかなり広く定着しつつありますが、書名にうまく表現されていますね。“情報の目利きになる”と。日垣氏はそのための基本として…
「ニュースを理解する」
「本を読む」
「専門家や当事者の話を聞く」
「考えながら書く」
を挙げています。勉強の復習と一緒で、実は最後のアウトプット、実際に書かないとダメなんですね。アウトプット前提で情報を集めるという姿勢はなかなか難しいんですが…、みんなブログでもやるべきかな。
ちょっと話がそれて恐縮ですが…、
私は、かつて自分自身が英語が苦手だったために、ありとあらゆる方法を試みて来ましたから、今、英語を苦手にしている生徒のわからない気持ちや、気になるところが推測でき、従って参考書の解説の不備がすぐに目に付くと思っています。だからこそ、効率的に成績を上げられるし(あっ言っちゃった)、生徒との連帯感まで生まれるのではないかと(笑)。
偉そうですが、それと似た構造と申しますか…、
日垣氏は3度の瀕死体験と3度の失業を経ているために、俗に言う世間の裏、死の世界を垣間見た経験が、常人の心を読んで、それをつかむコツを会得しているのではという気がしてしょうがないのです。
表の言葉を裏の意味に言い換えたり、表と裏の矛盾をついたりするのが、天才的に(もちろん経験と努力のなせる業ですが)うまいと感じます。従って、真意を付かれた側の反発もやはりあるようですが、覚悟の上でしょう。
本書は Q&A形式ですから充分読みやすいのですが、問う側の表現不足を補ってあまりある回答をして見せます。この人の聞きたいことはこのポイントだと、容易に察してしまうんですね。
たとえば、 “どうして一週間に30冊も本を読めるんですか”、 と質問され、(当然その人はできないから聞くわけですが)、そもそも質問自体が、相手がプロだということを忘れたもので、“プロゴルファーに、どうしてハンデが無いのかと聞くようなもの” と答えます。つまり的外れ。
そりゃそうでしょう。そもそも職業的に本とかかわりのない人が週に30冊読む必要など無いでしょうから。しかし、回答はそれにとどまりません。実際に質問者が不思議に思っているであろう、読むスピードに関して、非常に丁寧に具体的に説明します。
さらになぜそれほど読むようになったかというエピソード、なぜ現在読まなければならないかという職業上の説明までします。質問者も読む側も完璧に満足させる回答です。
他に、原稿料を教えてください、とか、なぜ実名報道なのか とか や大腸洗浄や北朝鮮、ファッションや科学知識、旅に関するまで、質問はさまざまですが、すべて上で述べたような姿勢で答えています。
最後には、究極の読書論として、もう一度、読書を取り上げており、私も参考になりました。きつい言葉もありますが、卑屈でも不遜でもなく、そのまま自分の体験や考えを述べている氏の態度が多くの人をひきつけているのだと思います。
P.S. このブログでは、メディアリテラシーに関して、
『メディアの迷走ー朝日 NHK論争事件(保阪正康ほか)』
『アメリカ人はなぜメディアを信用しないのか(ジェイムズ・ファローズ)』
『テレビの嘘を見破る(今野勉)』
『テレビ報道の正しい見方(草野厚)』
『社会調査のウソ(谷岡一郎)』
などをはじめ、他にいくつか話題にしました。この5刷の中では、特に下の3冊は実証的でお薦めです。読み比べてみても良いでしょう。他にも日垣氏の著作はおもしろいものが多くありますが、本書が一番多くの方に読みやすいものだと思います。興味があればぜひ…。
情報の「目利き」になる!―メディア・リテラシーを高めるQ&A 筑摩書房 詳 細 |
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】
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世間はまた三連休ですね。受験生たちには関係ありませんが…。最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも拙文が参考になりましたら、下のテキストバナーをクリックしていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
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『情報の「目利き」になる!』日垣隆
筑摩書房:218P:735円
日垣隆の本、私もこの間読みましたが、「どうもねえ・・」という感じでした。
あまり、私の好きなタイプではないようです。
私は彼らの意見に、賛成か反対かは別にして、あまりの暴論でなければみな好きなんです(笑)。
>アウトプット前提で情報を集める
今日のはまさしく今の私の姿勢です。
私も以前はただ読み飛ばしていたんですが、アメリカのオピニオンブログDKOSに投稿するようになってからは、引用文が間違ったりしないように元の記事原稿をコピーするようになりました。そのコピーファイルも1年もするとかなりな量になり、せっかく読んで面白かった記事だからお裾分けしたいな、というのがブログを始めたきっかけ。
米国ですから膨大なメディアの放出量ですが、その中でもキラリと光る記事をみつけるコツがあります。それはお気に入りのコラムニストをフォローすること。また私独自の消化方法なのでおすすめできませんが、コピーした段落毎に小見出しを付けるのです。(日英両語で)読んだ内容のエッセンスを表現するので、内容把握力を養うのに随分効果がありました。一言一句にはぜんぜん拘泥しません。要は何がキモ?を端的に語るという作業で、これは本業のコンセプトプランと通じるところがあります。
もうひとつ私が英文を読むコツは、辞書を一切使わないこと。
逆説のようですが、これが一番読解力を高めてくれたように思います。辞書があると、ただ言葉から言葉へと綱渡りするだけで脳裏に焼き付きません。子供が言葉を覚えて行く要領で、未知の言葉に行き当たったら、状況判断と前後関係で「察して」多分これだろうという日本語を必死で探す訳です。いやでも覚えますよ。
これは、オフィスの引越しをした時に荷物をほどかないうちに仕事を納めねばならず、念力のように必死こいて訳した時に開眼した方法です。おかげで、今でもよほどでない限り辞書使いませんよ。
転んでも拾って起きよう VIVA読書!(^_+)v
アウトプットを前提にするとysbeeさんが教えてくださったような、小見出しを付けたり、他のビジネス書に書かれているような情報整理の方法など、いろんな工夫が生まれてきますね。信頼のできる情報源があればなおさら心強いですし…。
英文を読むコツはですね、今度やりましょう(笑)。
受験生に対して言えることは、英語力を身に付けるにも読書と同じように、精読と多読両方あって、それは個人のレベルや目指す英語力によって異なるということでしょうか。