“アルケミスト” とは “錬金術師”のこと。大人気の “鋼の錬金術師” は知っていても、本書を知らない、またハリーポッターの “賢者の石” は読んでいても、こちらは読んでいないという人はぜひ。
本書はブラジル人作家が1988年に書いたベストセラーの翻訳で、すでに世界20カ国以上で読まれている名作、古典とさえ呼べますね。ご存知の方も多いでしょう。
今日、都内の小学校の卒業式です。卒業生に贈る一冊で、春休みに読んでもらいたいですね。
一応…
“錬金術” というのは、簡単に言えば、安物の金属を高価な金や銀などに変えてしまう方法のことで、“賢者の石” というのは、それを可能にするために絶対に必要な材料、難しい言葉だと触媒(しょくばい)のようなものです。
昔の錬金術の話しなど欲張り者たちの夢物語、などとあなどることなかれ。現代化学の基礎のほとんどがこの錬金術の研究から生まれているのです。ヨーロッパを中心に世界中の多くの人がその夢を見てくれたおかげで、現代の進歩した科学ができたというわけです。
あのニュートンまでも錬金術を相当に研究したそうですよ。(Wikipedia)
さて、物語では一人の羊飼いの少年が、こつこつと貯めたお金を手に、エジプトのピラミッドにある宝物を求めて旅に出ます。
その旅の途中で出会ういろいろな苦難。素直な世間知らずの少年はだまされます。おどされます。なぐられます。盗まれます。殺されそうになって我を失います。挫折しそうになって、羊たちの元に帰りたくなるのですが、それでも夢をあきらめない少年を支えたものは何なのか・・・。
題名からも想像できるように、奥義を極めている錬金術師が大きな役割を果たします。“賢者の石” と “不老不死の薬” をどこまでも求める人々と、逆に疲れてすっかり安定を求める人々、厳しい砂漠や太陽や風の自然条件との交わりのなかで、もがき、成長する姿が印象的です。
命がけで賢者の石を競って探す中で、化学が発達したように、きっと不老不死の薬を追い求めた傲慢な人たちのおかげで現代の医療もあるはずです。人間は単純といえば単純、不思議といえば不思議な存在ですね(笑)。
こういった話は、日本の小説よりも頻繁に “神” や “魂” “運命” といった宗教的なことばが出てきますし、それがストーリーに大きく影響しますので、読みにくい、理解しにくいと感じる生徒もいるだろうと、最初は紹介するのをためらっていたのですが、アマゾンで見たらびっくり。
100以上のレビューがあって、多くが賞賛しているではないですか。杞憂だったとわかりました。ただし、ただしです、“大人が読め”という内容も多かった(笑)。
なるほど、その通りで、夢をあきらめているのは子どもより大人。
いつも書籍の売り上げランキングなどで、ビジネス書や自己啓発書がすごく売れていて驚くのですが、その意味するところは、やはり日本の大人たちが、あきらめそうになりながら、この少年のように懸命に夢に向かって努力しているということだと思います。大人を励ます一冊でもあるわけです。
という訳で、私ももう一度はじめから読んでみますと、一度目は大して気に留めなかったセリフの中に、自己啓発書などでも見られるような “至言” が多く散りばめられていてうなりました。
すでに人生を悟っている、錬金術師に導かれながら、人との出会いと別れを繰り返しつつ、危機を乗り越え目的地に近付いていく夢と勇気の物語です。
小学校卒業のみんな (大人の我々も) 夢に向かってスタート!
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『アルケミストー夢を旅した少年』パウロ コエーリョ著 山川紘矢,山川亜希子訳
角川書店:199P:580円
英語翻訳版(と日本語翻訳版)には、原書にはあるのに訳していない箇所が散見されるのと、章立てや一行あけなど文体と言おうか、文章の呼吸がかなり違うそうです。これは著者、パウロ・コエーリョの著作を初めて翻訳して英語圏に出版するとき、著者と相談のうえ英語圏の文化に配慮したためとのことです。
いずれにしろ、この作品がよい作品であることにはかわりはないとおもうのですが。でも、ポルトガル語ができるのなら、原書で読んでみたいな。
個人的には宗教的なのは大好きです。
今さらなんですけれど、翻訳がしっくり来ない部分も確かにありましたよ。特に前半はちょっとぎこちなく感じた面があって、“乗る”のにやや時間がかかりました(笑)。
砂漠に出てからは良いんですけどね。
う~ん、難しい。ロッタちゃんのがいいかな~、とも思うし…。パラパラめくってからですね(笑)。
ジャンルの垣根を軽々ひらっと超えて
こういう本を紹介してくださるVIVAさんは
やはり読書の達人というか「知性の錬金術師」と呼べそうですね。
(ふむ、我ながらこのタイトル気に入っちゃいました!
生徒さんは金の原石か、ラフ・ダイヤモンド。)
そもそもラテン系の文学というのが、
日本の出版界ではかなりマイノリティな存在なので、
こうして教えてくださる方がいないと、
良書も大海の彼方に漂流していってしまいますね。
いつも同じ感想で念仏みたいですが、ほんと「面白そう~!」
ところで、ブログ友のmeixiさんの2/25の記事で
たまたま錬金術の話題になって、コメントにも書いたのですが、
錬金術(アルケミー)の語源は古代フランス語/中世ラテン語で、
元々はアラビア語の「Al Kimiya=the transmuting metal」が
十字軍遠征の時代に定着したようです。
で、さらにそのペルシャ語の語源は、ギリシャ語の「KHEMIA/
KHEMEIA」で、同じく錬金術・金属の化学変化の意味なので、
多分そうした技術の伝来と一緒に、言葉も移入定着したのでしょうね。
ひとつの言葉の中に何千年もの民族の抗争が秘められているようで
歴史って掘れば掘るほど面白いな、と思います。
サイバー婆より (^_+)v
処女作の「星の巡礼」はスペインのサンティアゴ巡礼の道が舞台、つまりカトリックのお話し、「ピエドラ川・・・」はカトリックの聖職者との恋のお話し(?)だから、私は読んでいないけれど(出だしでつまづきました)、かなり宗教色が濃いときいています。(ある意味生々しいらしい)
「アルケミスト」は扱う対象が自分の信仰している宗教ではない分、第三者的な見方が出来たので、物語として成功を収めたのかも知れません。
最新作はエッセイで「流れる川のように」というタイトルがついています。最近ペーパーバックになりました。日本語翻訳版はいつでるのかな。
指摘されればその通りで、ラテン文学という言葉さえまず聞きません。
ブラジルだけじゃなくて、きっとアルゼンチンやチリやペルーにも知らない名作がたくさんあるんでしょうね。よく政治的な配慮があるといわれる、ノーベル文学賞のデータベースを、今あらためて見てみたらいろいろな国の作家がいて、全部買いたくなりました(笑)
http://www.kufs.ac.jp/toshokan/worldlit/nobelprize.html
本書の主人公の名がサンチャゴ(サンティアゴ)ですから、不思議な感じがしたのですが、処女作がそうだったんですね。
エッセイがあればぜひ読んでみたいです。放浪の旅で何を感じ取ったのか知りたい!