『アルケミスト』 では、錬金術師に導かれる主人公が、身近にあるものをすべて捨ててでも、夢だけは捨てず、ピラミッドにある宝物を追い続けることで、奇跡を起こすという物語でした。賢者の石 をあきらめずに求め続ける人も描かれます。
同じく、奇跡を起こす、“あきらめないで信じることで、望みがかなう” ということを示す小説であっても、逆に “賢者の石など無いのだ!” と、主人公を叱りつける一冊をご紹介しましょう。おもしろいですね。
オグ・マンディーノは10年ほど前に亡くなりましたが、『十二番目の天使』『この世で一番の奇跡』や『史上最強の商人』などの作品が、世界中で何百万部も売れた作家です。
ご紹介する本は『アルケミスト』以上に宗教が色濃く出ていて、やはり日本では苦手な人もいるでしょう。ただそれを割り引いても夢のある一冊だと思います。
本書の舞台はフィンランドのラップランド。いきなりですが、そうです、サンタクロースが住んでいると言われているところですね。この極寒の地に生まれた一人の才気煥発な少年トゥロが主人公です。
ストーリーを紹介します。■~■
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両親と妹の4人で幸せな生活を送っていた少年トゥロの家族に、ある日突然、信じられない不幸が降りかかります。トナカイの扱いに失敗したトゥロを助けようとして、父親が命を落としてしまうのです。
一家を支えるために働き続けた母親も、過労のためか突然死亡してしまい、運命が一気に暗転します。残された兄妹二人だけで人の世話にならずに生きていこうと決めたのですが、その冬は猛烈な嵐が村を襲います。トゥロたちだけでなく、村中が食糧不足、燃料不足に見舞われ、パニックに陥ります。
絶望的な状況下、トゥロは自分が上げた凧で星をつかめるという、夢で見たことを信じて、なけなしの金をはたき、あるだけの糸を買い込み、嵐の中、凧を高く高く上げます。なんとその夢は実現し、アカバールという名の星がトゥロのところの木に降りてきて二人は友人になります。奇跡が起こったのです。
何万年も生きてきた星のアカバールは、トゥロに人間の物質主義などのおろかさを説きます。賢者の石に象徴されるような、一攫千金を求める人間のおろかさを指摘します。そしてどうすれば地球が救われるのかをトゥロに教える、君は選ばれた人間なんだとほのめかします。
村は昼間でも日の昇ることのない冬の北極圏付近、アカバールの放つ光と熱があれば、村は救われるというので村中が大騒ぎ。案の定、そのアカバールを自分のところへ置いて欲しい人たちの奪い合いが始まります。
やっと話しが付いて、アカバールを移動させる際に、作業がうまくいかず、アカバールを木から転落させてしまい、メッセージを言えないままその場で絶命させてしまいます。
たった一つの希望を失った村の重鎮たちは、トゥロに凧を使ってもう一つ星をつかまえてくれと懇願します。人々のために再び、トゥロは命がけで、奇跡にいどみ、アカバールの友人の星ヤーナを同じ木に降ろすことに成功。
ヤーナはアカバールから聞かされてきたメッセージをトゥロに伝えたあと、村のどこにでも自分は行くというのですが、冷静さを取り戻した村では、奪い合いはおきず、トゥロと一緒に時間を過ごします。
やがてヤーナが空に戻る日になって、もう一度凧を上げるのですが、なんとトゥロはヤーナと一緒に空へ消えてしまい、自らも星になろうとします。一人残された妹ですが、その後は幸せに暮らします。
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つまり、この本では、賢者の石を夢見ることは富や名声だけを追い求める行為として批判されるわけですね。自然の法則に反したら人間は必ず滅亡するという強いメッセージが込められています。
オグマンディーノ自身、まもなく大学入学という時、これまで作家になることを薦めていた母親がなんと昼食をつくっている最中、急死してしまい、大学進学、そして作家への夢を同時に失うという経験をしています。トゥロとイメージがダブります。
軍隊時代にためたお金で、アパートを借り、作家に挑むも挫折。故郷に戻って、セールスの仕事に就き、結婚、娘が誕生しますが、借金でどうにもならず、アルコール中毒に。妻子は去り、仕事、家をも失っています。
そして『アルケミスト』の著者パウロ コエーリョと同じく、彼も放浪します。安酒を買う金のために、どんな仕事でもやりました。ついにはあまりのみじめさに自殺が脳裏をよぎるのですが、ある朝気づいた時には図書館の前にたっていたそうです。
そこで、成功哲学の本(自己啓発の類でしょうか) を読み始め、これを境に、マンディーノの人生は変わり始めるんですね。本書でも父親が息子のトゥロにふんだんに本を与えるシーンがあります。
マンディーノはある本に感化されて、その著者の会社に入ってからは再び猛烈に働き、次々と成功をおさめます。ついには世界的な作家になるわけですから、自分の人生が並の小説以上に劇的なわけで、まさに奇跡を体現しています。
アカバールは、キリスト教の教えを明確にトゥロ(人類)に伝えるために地球に来たことが分かります。地球上の一人ひとりにみな、一つずつ星が見守っているというメッセージ、人のために尽くした人間は、死んでも星になれるのだという勇気をたたえています。
きっと、どん底だと感じている人々を勇気付けてくれると思います。興味のある方はぜひ。
星のアカバール ダイヤモンド社 詳 細 |
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誰でも星になれる!
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『星のアカバール』オグ・マンディーノ バディ・ケイ著 牧野・M・美枝訳
ダイヤモンド社:197P:1365円
本の主人公よりも波乱に満ちた、作者の人生の方に
惹かれてしまいました。
自伝でもあれば読んでみたいものです。
ところで、JRANKで初めて1位達成してましたよ。
おめでとうございま~す!
星が5つ光ってました。
そうなんですよ。本書も良いのですが、オグマンディーノ自身がものすごい人生をおくっているんです。神さまより、神さまを信じる人に興味が沸くように、本そのものより、その作者に興味を覚えることがあります。アメリカでは講演が大人気だったらしいです。
本当だ、JRANK何とか1位でした。いつもありがとうございます。他が危ないので頑張ります。
つられて、同じ作者の「The Greatest Salesman in the World」を衝動買いしてしまいました。VIVAさんのせいですよ。(^_^)
記事で数百万部って書きましたが、山ちゃんさんのコメント読んでもう一度確認したら、3千万部以上ですって!
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全18章の第2章まで読みましたが、英語もさほど難しくなく一週間程で読めそうです。そして読んでいてわくわくしてきました。(高校生の副教材にもなりますね)
さて、アルケミストといいこの本といい、書いているのはキリスト教世界の人ですが、お話しはイスラムのウィズダムですよね。そこが面白いと感じました。(中世はイスラム世界のほうが、西洋より先進国ですものね)
日本語版は、構成が違っているんですけどね。
それはともかく、なるほど、別にキリスト教を広げようと思って書いているというのではないのでしょうね。
アルケミストと本書、著者が二人とも放浪したという点が気になっているのですが…。自分が放浪したらもっと共感度が上がるかもしれません。
ほうろうかぁ~、家族を後に残してしてみたいけど…、あ~、まずいかな、ですね(笑)。