道々の枝折

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選挙を前に

2021年10月23日 | 随想
衆議院選挙と参議院補欠選挙が重なる当県、候補者たちの運動もマスコミの報道も熱を帯びてきた。前例のない短期間の選挙日程は、候補者にとって体力的にも精神的にも、キツいものがあるだろう。政権の思惑は的を射るだろうか?

政治家というものは、選挙に全力を傾注し、目出たく当選して国会議員になると、大きな達成感と安堵感とを得るに違いない。しかし、それも束の間、政権党の議員には当選後に熾烈な競走が待っている。

内閣または党の役職に就く為の、数多の同僚との間で繰り広げられる熾烈な猟官活動である。議員が派閥に入るのは、将来然るべき要職に就きたいがためである。派閥内で頭角を表し、派閥の長に認められなければならない。その前に雑巾掛けと呼ばれる地味な政務をこなさなければならない。無役の議員は陣笠と呼ばれ、うだつが上がらないのは、国会議員でも他の組織と変わらない。

当選した与党議員は、大方選挙民との約束を果たせないだろう。それは彼が、公約した政策実現に注力するよりも、同僚議員との猟官競争に奔走せざるを得ないからである。議員としての存在証明に足るポストにつかないと政治生命に関わる。学業なら自分の能力と努力次第で上位を取ることはできるが、役職人事となると、ライバルの得点は即自分の減点である。その面での配慮行動が必要になる。これが彼の能力限界を早めることになる。

議員も人の子、自己保存欲求に駆られ自己存在証明に躍起になるのは、一般の人々つまり選挙民の私たちと変わらない。政策に熱心に見えて、その実は猟官志向に奔らざるを得ないのである。政権党の派閥の存在意義は、議員たちの猟官志向によって支えられている。
派閥議員は、党や内閣のポストに就くことを第一義にして、派閥に加入する。それが有能な政治家を、早々と能力限界に到達させてしまう。彼は政策で実力を発揮するより、猟官に力を割かなくてはならないからだ。

他方政権奪取を目的とする野党の当選者は猟官運動の必要がない。議員となったその日から、それまで以上に政策実現に向けての努力と研鑽が始まる。それが彼らの存在証明となるからである。それは彼らの政治家としての能力限界を先伸ばしする。彼らは政権を担う大望があるから、当選したことに満足して気を抜くことはできない。与党政治家と野党政治家の違いは、当選の事実を安定と考え安心していられるか否かである。

人が能力限界を自覚できないのは、本人の認識の問題ばかりでなく、就いている職務の内容にも拠る。職務に正確性・厳密性・機動性を要しない仕事は、人をみるみるうちに能力限界に到達させる。心身の衰えた老人が就いていられる役職というものは、大抵そういうものである。実務を要しない名誉職などはその典型で、過去の業績に対する褒賞だから、安楽を保証された指定席である。そのようなポストに就いていて、誰が自己研鑽に励むだろう。

選挙後は、与野党協力して、政治の世界から職務と能力のミスマッチをなくし、機能的組織による国政運営を再構築してもらわねばならない。これまでの劣化した国会の制度は、改善すべきである。その意味で、派閥議員の当選回数と他派閥との均衡によって大臣を選んだり、論功行賞的人事をするのは明らかに時代にそぐわない。そのような人事では、世界の動きに蹤いていけなくなるだろう。

能力限界に達していない人物を登用できるかどうかは、その政治組織の機能の弾力性の指標である。選挙民はそこに注目して、選挙に臨まなければならない。

選挙は政治家の新陳代謝を促進させるものであるべきだろう。タックスペイヤーたる選挙民は、ポストの居心地を求めて権力闘争に明け暮れる政治を容認してはいけない。

能力限界に達した政治家が、国政を壟断する現実を私たちは10年間も体験した。政治が変わるも変わらないも、私たち選挙民の冷めた観察眼に掛っている。

少なくとも国会議員には、自ら率先して年齢制限を設け、60歳未満とする法改正を実行してもらいたい。選良は草ぐさの一般人とは異なる。戦闘機パイロットと同様の、絶え間ない情況判断が求められる仕事である。活躍期間が短くなるのは宿命だろうが、高額な報酬(歳費)と諸々の特権はそれを補償するためのものである。

年齢制限は多すぎる議員定数の削減にも繋がる。政治は本来困難で心身が休まることのない激務であると思う。選良でなければ出来ない仕事であるはずだ。
居心地の良い安泰な政治ポストというものは、この国から成る可く減らさなくてはならないと思う。



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