おもしろコラム

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わが悲しき娼婦たちの思い出

2009-12-30 05:39:10 | 読後通信簿
・敬愛する曽野綾子の私日記6「食べても食べても減らない菜っ葉」を読んでいる。その中で先生の読んだ本が何冊も出てくるが、この本も推薦されているものの一つだ。川端康成の「眠れる美女」に着想を得て書いたという。

・満九十歳を迎える記念すべき一夜を、処女と淫らに過ごしたい! これまでの幾年月を、表向きは平凡な独り者で通してきたその男、実は往年、夜の巷の猛者として鳴らした、もう一つの顔を持っていた。かくて昔なじみの娼家の女主人が取り持った、十四歳の少女との成り行きは……。悲しくも心温まる、波乱の恋の物語。

<彼女のおかげで、九十年の人生ではじめて自分自身の其の姿と向き合うことになった。私は、事物には本来あるべき位置が決まっており、個々の問題には処理すべきときがあり、ひとつひとつの単語にはそれがれがぴったりはまる文体があると思い込んでいたが、そうした妄想が、明断な頭脳のもたらす褒賞などではなく、逆に自分の支離滅裂な性質を覆い隠すために考え出されたまやかしの体系であることに気がついた。教育を受けたちゃんとした人間のように見せかけているのは、なげやりで怠惰な人間であることに対する反動でしかなく、度量の小さい人間であることを隠すために寛大な振りをしているに過ぎず、何事によらず慎重なのは、ひねくれた考え方をしているからであり、人といさかいをしないのは抑えに抑えた怒りに身を任せたくないからであり、時間を厳守するのは、人の時間などどうでもいいと考えていることを悟られないためだということに気がついた。そして最後に、恋というのは魂の状態ではなく、十二宮の星宮の位置によるものだということを発見した。>
G・ガルシア=マルケス/著 木村榮一/訳
新潮社 刊

G・ガルシア=マルケス/著
Marquez,Gabriel Garcia
1927年コロンビアの小さな町アラカタカ生まれ。ボゴタ大学法学部中退。自由派の新聞「エル・エスペクタドル」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪れ、ジュネーブ、ローマ、パリと各地を転々とする。1955年処女作『落葉』を出版。1959 年、カストロ政権の機関紙の編集に携わる。1967年『百年の孤独』を発表、空前のベストセラーとなる。以後『族長の秋』(1975年)、『予告された殺人の記録』(1981年)、『コレラの時代の愛』(1985年)、『迷宮の将軍』(1989年)、『十二の遍歴の物語』(1992年)、『愛その他の悪霊について』(1994年)など。1982年度ノーベル文学賞を受賞。

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