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肉食とタブー

2012-04-23 07:16:02 | おもしろコラム
 人が肉を食べるというのは、ライオンやチンパンジーが肉を食べるのと、ちょっと違います。 人間には宗教や民族によって『肉食のタブー』があります。 食のタブーというのは、「食べる気もしないおぞましいもの」ということで、どこの民族でもあります。
 例えば、日本人ならサルやイヌを食べる気はしないでしょう。
(昔の日本人はサルもイヌも食べてたけどね)世界的に見ると、イスラム教徒、ユダヤ教徒、一部のキリスト教徒は、豚肉を食べません。ユダヤ人とかは、豚を非常に穢らわしいものを考えていたようで、食べるどころか触ることも見ることさえ嫌悪したりしておりました。
 新約聖書にはイエスが、他人の飼っていた豚2000頭を殺すシーンが描かれていますが、イエスや弟子たちは、そのことにまったくといっていいほど、良心の呵責すら感じていない。 本当に殺したのなら、養豚業者の財産を奪う大犯罪だと思うのですが、イエスたちにとって穢れた豚を殺すのは、なんでもないことであったのでしょう。 (たとえ他人の飼っている豚でもね)
 一方、ヒンズー教徒は牛を食べない。仏教、ヒンズー教の僧侶や上級のカーストになると肉食を避け、ジャイナ教徒は、肉を食べない。 アフリカのある民族は海辺や川辺に住んでいるにもかかわらず、魚介類を「おぞましいもの」として食べない民族もあります。
 イスラム教やヒンズー教の肉食タブーは、家畜を飼育するときのコストである程度説明がつきます。つまり、イスラム教やユダヤ教が生まれた砂漠や荒野は、豚が好む水や森が少なく、豚の餌は人間の食べるものとほぼ同じなので豚を育てるのに、あまり向かない。
 ヒンズー教の場合、インドの人たちは、牛を神聖な動物としつつ牛の飼育にほとんどお金をかけない。その牛の糞を無料の燃料にし、無料のトラクターとして使用しているため、殺して食べるよりも、ギリギリ死ぬまで生かしておいたほうが、オトクなのです。
 また、東洋の宗教には、肉食やをゲカレと考えるところがあり、肉食を避けたり、する人を差別したりする風習があります。 江戸時代、日本で動物を解体するのは身分だし、韓国の済州島は牧場があり、肉を扱う卑として韓国人から差別を受けている。日本の在日朝鮮人には、済州島出身の人が多いが、これは済州島が朝鮮戦争でひどい戦場になったことと、差別のため日本に逃げてきた人が大変多いためです。
 かくのごとく、たかだか肉食ひとつに注目してみても、人間の営みというのは非常におもしろいものです。
(食文化研究家 巨椋修<おぐらおさむ>/絵:吉田たつちか )


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