もう一度『栄光のル・マン』を見直してみようか…
自身もカーレーサーとして鳴らした希代のアクションスター、スティーブ・マックィーンが企画、製作、主演し、ル・マン24時間耐久レースの模様を描いた『栄光のル・マン』(71)。その製作の裏側を描いたドキュメンタリー映画が公開された。
『栄光のル・マン』は、当初は『戦雲』(59)『荒野の七人』(60)『大脱走』(63)でコンビを組んだジョン・スタージェスが監督をしていたが、レースのリアリティーを求めるあまり、人間ドラマを極力排除しようと考えたマックィーンと対立し、スタージェスは監督を降りてしまう。以後、二人が顔を合わせることは二度となかった。
『栄光のル・マン』の製作に関してはこれが最大の不幸だったとも思えるが、このドキュメンタリーは、ほかにもさまざまなトラブルが発生し、追い詰められていくマックィーンの姿を追いながら、ヒーローではない、苦悩する生身のマックィーンの孤独な姿を浮き彫りにしていく。先妻のニール・アダムス、息子のチャドら、残された者たちの証言も切なく響く。
ところで、『栄光のル・マン』本編の方は、74年のリバイバル時にテアトル東京で見た。マックィーンの主演映画ということで、大いに期待したのだが、思いのほか退屈な映画で見ながら睡魔に襲われた記憶がある。以来、自分の中では封印したマックィーン映画になっている。
マックィーン自身は、ジョン・フランケンハイマー監督、ジェームズ・ガーナー主演の『グラン・プリ』(66)に先を越されたと悔しがっていたようだが、映画の出来という点では、贔屓目に見ても軍配は『グラン・プリ』に挙がるとずっと思ってきた。40年余りの歳月を経て、このドキュメンタリーを見た後で見直せば、その印象は変わるのか。
いずれにせよ、マックィーンファンの一人として、もう一度『栄光のル・マン』を見直してみる必要があると感じさせてくれるドキュメンタリーではあった。
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