田中雄二の「映画の王様」

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『カラミティ』

2021-06-13 07:22:05 | 新作映画を見てみた

 レミ・シャイエというフランス人の監督が、西部開拓時代のアメリカに実在した女性ガンマン、カラミティ(疫病神)・ジェーンの子ども時代を創作を交えて描いた長編アニメーション。

 実際のカラミティの生涯は謎に包まれており、どこまでが事実で、どこからが伝説なのかがはっきりしない。だから創作が入り込む余地がある。

 シャイエ監督は、詳細は不明だが、カラミティが生前「幼少期に一家でミズーリ州からモンタナ州まで楽しい旅をした」と語っていた点に着目したという。そこで、描く年代を彼女の少女時代の1863年とし、舞台をワイオミング州(ホットスプリング郡)からアイダホ州へ向かう「オレゴン・トレイル」に設定。母の死後、父が幌馬車隊に加わり移転先まで旅をする物語とした。

 女性は女性らしくという西部開拓時代。この映画の主人公マーサは、旅の途中で負傷した父の代わりに、家族を支えるために髪を切り、ジーンズを履くことを決意する。そして、生きていくために必要な乗馬、馬車の運転、投げ縄といった“男の作法”を苦労して習得する。

 というわけで、伝説の女性ガンマンの誕生秘話の側面もある本作は、マーサを“ジェンダーレスな生き方”を選択した女性として描いている。そこに“今の視点”が入り、今の時代にカラミティ・ジェーンを描く意義が生まれる。

 日本のアニメとも、アメリカのアニメとも違う、独特の質感と色遣いが印象に残ったが、イタリア語のマカロニウエスタンならぬ、フランス語の西部劇というのは、やはりちょっと妙な感じがした。


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