よくこんな話を思い付いたものだ
友人と共にポッドキャストを運営するウォレス(ジャスティン・ロング)。ネタ探しでカナダを訪れた彼は、「面白い話がある」という元船員に話を聞くため、人里離れた老人の家を訪ねる。
だがウォレスは、人間をセイウチと合体させるという妄想を抱く老人によって“セイウチ人間”にされてしまう。
タイトルの「タスク」とは牙のこと。主人公の名前はウォルラス(セイウチ)と似ているし、彼の変な形のひげもセイウチのそれのように見えなくもない。
と、この映画は初めからウォレスがセイウチ人間になる要素を提示している。つまり確信犯的に作られたブラックコメディーなのだ。
そして、この映画はネット上の掲示板と広告からアイデアを得ながら、お調子者で人を笑い者にするウォレスが受ける受難を通して、他罰的で他者を嘲笑する傾向があるネット住民を皮肉るという側面もある。
狂気の老人役をマイケル・パークスが怪演し、ウォレスの同僚役を、でぶでぶになった名子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが演じ、後半は怪しい探偵役で変装好きのある大スターも登場する。
ところで、狼男、ハエ男、ワニ男、ヘビ人間、ムカデ人間など、人間と異なった生物を混ぜ合わせる映画を、最近はハイブリッド映画と呼ぶらしい。ともあれ、この映画のセイウチ人間はどちらかと言えばフランケンシュタインに近いか。
彼らは皆グロテスクだが悲しい存在でもある。彼らの存在を通して、観客は笑いと恐怖(コメディとホラー)は表裏一体だと気付き、他人の不幸を見るのは面白いという残酷趣味を満足させたりもするのだ。
それにしても、こんなにグロテスクでばかばかしい話をよく思い付いたものだと感心するやらあきれるやら。
さて、元祖セイウチ人間と言えばザ・ビートルズ「アイ・アム・ザ・ウォルラス」。ひょっとしてこれがこの映画の大元か。「グラス・オニオン」でジョンは「セイウチはポール」と歌っていた。
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