『羊たちの沈黙』(91)(1991.8.15.松竹セントラル)
連続猟奇殺人事件を追う女性FBI訓練生クラリス(ジョディ・フォスター)と、彼女にアドバイスを与える猟奇殺人犯で元精神科医のレクター(アンソニー・ホプキンス)との奇妙な交流を描く。監督はジョナサン・デミ。
この映画、表向きはヒッチコックやデ・パルマも真っ青のサイコホラー的な作りで、猟奇的な描写が鼻に付くところもあるのだが、少々深読みをすれば、これは一人の女を挟んだ男同士の葛藤を描いているところもあるのではと思う。
つまり、レクターもクラリスの上司のクロフォード(スコット・グレン)も、クラリスを愛し、欲していながら、それを隠してプラトニックに徹している。だから、トータルとしては、猟奇と純愛という正反対の要素が微妙に絡み合って、異様な雰囲気を醸し出しているのだ。ただ、フォスターに言わせれば、これは女性ヒーローを描いた映画だというのだから、これは男から見た勝手な推量なのかもしれないが。
ところで、この映画に魅かれた理由は、わがお気に入りの3人の競演という点にあった。そして、その期待に違わず、不思議なセクシーさを発散させたフォスター、『マジック』(78)以来、久しぶりに怪しさを発揮したホプキンス、そして、彼らと見事に渡り合い、名脇役としての地位を確立したグレンと、三者三様の名演を見せてくれたことが、大きな収穫となった。
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