清朝最後の皇帝、溥儀の“ローズバッド”とは
清朝最後の皇帝であり、後に満州国皇帝となった溥儀(ジョン・ローン)の数奇な生涯を描いた超大作です。歴史に弄ばれ、皇帝から戦犯となり、最後は一市民となった溥儀の生涯とは一体何だったのか。彼の少年期、皇帝時代、戦犯(収容所)時代、晩年(文化大革命)を錯綜させながら描いていきます。
溥儀の自伝を基にベルナルド・ベルトルッチが監督し、共同脚本のマーク・ペプロー、“光り”を見事に捉えた撮影のビットリオ・ストラーロ、音楽の坂本龍一らと共にアカデミー賞を大量受賞しました。初めて紫禁城でロケをした外国映画としても記憶されます。
また、この映画をプロデュースしたジェレミー・トーマスは、『戦場のメリークリスマス』(83)もそうですが、異文化(東洋と西洋)の出会いと衝突を好んで取り上げる製作者です。この映画も西洋による近代アジア史研究の一端と言えるのかもしれません。また、坂本は曲を作る前に、トーマスからオーソン・ウェルズの『市民ケーン』(41)を参考にするようにとアドバイスされたそうです。
何故『市民ケーン』なのか。それがラストシーンで明らかになります。
一介の庭師となった溥儀が紫禁城を訪れ、管理人の息子に、自分が子供の頃に玉座に隠したコオロギの箱を見せます。夢とも現実ともつかない不思議なシーンですが、このコオロギの箱こそが、一時は栄華を極めながら、子供の頃の小さな宝物すら自由にならなかった男の孤独な人生を象徴するもの。つまり『市民ケーン』における“ローズバッド”と同じ意味を持っていたのです。
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