『信虎』(2021.9.9.オンライン試写)
甲州武田家の軍学書『甲陽軍鑑』を基に、武田信玄(永島敏行)亡き後、再び武田家の実権を握らんとする父・信虎(寺田農)と孫の勝頼(荒井敦史)との確執を中心に、信虎の晩年と武田家の滅亡を描く。
雑多な登場人物と複雑な時代背景を説明するため、ナレーション代わりに、武田家とゆかりのある柳沢吉保(柏原収史)に昔語りをさせる形で進行させ、人物名やセリフに字幕スーパーを入れるなど、努力の跡は見られる。
また、信玄の影武者を描いた黒澤明監督の『影武者』(80)で音楽を担当した池辺晋一郎を起用し、同作で織田信長を演じ、先頃亡くなった隆大介も顔を出すなど、『影武者』を意識したところもあるのだろう。
ただ、寺田をはじめ、2時間ドラマの脇でよく見かけるような俳優たちと、時代劇慣れしていない若手俳優たちの熱演も、どこか空回りして見えるし、全体のテンポもあまりよくない。
その理由は、監督は金子修介名義になっているが、恐らく製作、共同監督、脚本の宮下玄覇なる人物のワンマン映画というところにあると思われる。昨年の『HOKUSAI』の河原れんと同じようなにおいを感じ、何だか俳優たちがかわいそうに思えた。
映画を相対的に見るのはあまりよくないとは思うが、これを見ると、退屈に感じた黒澤の『影武者』が、素晴らしいものに思えてくるという錯覚に陥る。
「飛び出せ!青春」の片桐役などで活躍し、後に芸能レポーターに転じた剛たつひとの、本来の俳優としての姿を久しぶりに見た。
戦国時代の武田家のお話で、興味をそそられます。
(先祖が赤備えであったため)影武者の撮影時、
馬に乗れるエキストラは、歩兵と宿舎が別で、食事も
ステーキとかしゃぶしゃぶなどで大変豪華であったそうです。
そうなんですか! ご先祖が赤備えとは驚きました。この映画、出来はいまいちですが、信虎の視点から武田家を見たところが斬新ではありました。