「表裏源内蛙合戦」(92)(1997.11.19.)
演出・熊倉一雄、音楽・服部公一 安原義人、熊倉一雄、納谷悟朗、矢代駿
江戸の一大奇人・平賀源内の夢と挫折の生涯を、色と欲が渦巻く風俗の中に浮かび上がらせる。
今回のテアトル・エコーは、声優として有名な人たちが所属する劇団。普段はあまり顔を見ることはないが、この芝居で、彼らの俳優としての本来の姿が見られた。
加えて、すでにこの初期のものから、井上芝居の特徴である、ミュージカル的な要素や、タイトル通りに文化人たちの裏表を描くことで、よりその人物を際立たせるという手法が確立されていたことをうかがい知ることができた。
「化粧」(82)(1997.11.20.)
演出・木村光一
渡辺美佐子による一人芝居。旅一座の座長をバリバリの新劇の女優が演じる面白さがある。一種の母ものとしての芝居そのものと、劇中劇が二重構造となることによって生じる切なさが見どころ。
「紙屋町さくらホテル」(97)(1997.12.30.)
演出・渡辺浩子、音楽・宇野誠一郎 神宮淳子(森光子)、長谷川清(大滝秀治)、園井恵子(三田和代)、大島輝彦(井川比佐志)、針生武夫(小野武彦)、熊田正子(梅沢昌代)、丸山定夫(辻萬長)
新国立劇場のこけら落とし公演。広島の原爆で散った、さくら隊という実在の即席一座に、軍人を紛れ込ませるという、井上芝居お得意の、相反する価値観を持つ者たちのちぐはぐなやり取りが展開する。それを半ばコミカルに見せながら、やがて事の核心へと迫っていく、という手法が、この芝居でも効果的に使われていた。
そして、そこから戦争の罪、死んでいった者たちの無念、生きのこった者の苦悩、あるいは芝居の素晴らしさ、といったテーマが浮き彫りになる。今回もお見事な作品でありました。
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