六角精児の「呑み鉄本線・日本旅」のBGMで「Mr.Bojangles=ミスター・ボージャングル」(ニッティー・グリッティー・ダート・バンド)が流れた。
この曲は、昔々ニルソンやサミー・デイビスJr.の歌で知ったのだが、オリジナルはジェリー・ジェフ・ウォーカーというフォークシンガーによるもの。ウォーカーがニューオーリンズを放浪中、酔っ払って刑務所に入れられた時、ボージャングルと名乗るひとりの老ボードビリアンと知り合う。で、この曲はそのボードビリアンの話を基に作られたのだが、後にこの曲にまつわる“伝説”が誕生する。
それは、結論からいえばサミー・デイビスJr.がこの曲をカバーしたために生じた誤解なのだが、ミスター・ボージャングルのモデルはサミーのタップダンスの師でもあった有名なビル“ボージャングル”・ロビンソン(プロレスラーの人間風車の方じゃなくて)だという話が広まったのだ。
実際のロビンソンは、この歌のボージャングルのように南部をどさ回りすることも、落ちぶれて酒代稼ぎに踊ったことも、ましてや刑務所に入れられたこともなかったのだが…。
多分サミーは、ロビンソンや自分も含めた芸人たちへの思いを込めてこの曲を歌ったのだろう。で、そんな彼の思いと抜群の表現力が、聴衆の心に訴え掛け、伝説を誕生させたというわけだ。さてこの場合、事実と伝説のどちらを思い浮かべながら聴いても、この曲は心に響くものがある。
「Mr.Bojangles=ミスター・ボージャングル」
ボージャングルって人と知り合った。彼は擦り切れた靴を履いて、踊って見せてくれたんだ。白髪頭で、よれよれの服を着て、だぶだぶのズボンを履いて、古くて柔らかい靴を履いて。すごく高く跳んだんだ、すごく高く跳んだ。そして、ひらりと着地したんだ。
彼と会ったのはニューオリンズのブタ箱だった。オレがひどく落ち目の時だった。彼は酸いも甘いも噛み分けた賢者のように、心を開いて話してくれた。彼は人生を語ってくれたんだ、人生を語ってくれた。笑って、膝を打ち鳴らしてステップを踏んだんだ。
「名前はボージャングルだ」と言うと、ひと踊り、ブタ箱の中を滑るように横切った。ズボンをつまんで姿勢を正すと、ごらん、高く跳び上がって、かかとを打ち鳴らした。彼は大笑いしたんだ、彼は大笑いした、服をはためかせて。
ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、踊っておくれよ。
旅芸人のショーや郡のフェアーで踊って、南部中を回ってきた。そして涙を流しながら、彼と彼の犬が、15年間、どんな旅をしたかを話してくれた。その犬は年老いて死んだんだ、犬は年老いて死んだ。20年たつのにまだ悲しいんだそうだ。
「今じゃあ、酒場で踊って、酒とチップをもらうのさ。だけど、大抵は、こんな郡の牢屋で暮らしてる、ちょっと飲み過ぎるからな」と。彼は頭を振ったんだ、頭を振った。誰かが彼にせがむ声が聞えた「ねえ、ねえ、お願いだ…」
ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、踊っておくれよ。ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、ミスター・ボージャングル、踊っておくれよ。
JERRY JEFF WALKER
https://www.youtube.com/watch?v=7t-2GeZFDdc
Nilsson
https://www.youtube.com/watch?v=mrQzAAxICVo
Sammy Davis Jr.
https://www.youtube.com/watch?v=roNCodl4Wng
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