田中雄二の「映画の王様」

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『老後の資金がありません!』

2021-10-24 13:20:45 | 新作映画を見てみた

『老後の資金がありません!』(2021.10.23.東映試写室)

 垣谷美雨の同名小説を前田哲監督が映画化。2年前に撮影され、コロナ禍で公開が1年延期になったために、くしくも、この映画と『そして、バトンは渡された』という、家族を描いた前田監督の2本の映画が、同時に公開されることになった。

 後藤篤子(天海祐希)は、家計に無頓着な夫の章(松重豊)、フリーターの娘まゆみ(新川優愛)、大学生の息子・勇人(瀬戸利樹)と暮らす平凡な主婦。コツコツと老後の資金を貯めてきた。

 ところが、しゅうとの葬式代、パートの突然の解雇、娘の結婚、さらには夫の会社が倒産と、貯えた金を目減りさせる出来事が次々と降りかかる。そんな中、夫の母・芳乃(草笛光子)を引き取ることになるが、芳乃の奔放な金の使い方で予期せぬ出費がかさみ、篤子はさらなる窮地に追い込まれる。

 前田監督は、大人が見られるコメディ映画を目指して、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)同様、一つ間違えると単なるお涙頂戴話になりかねないような難しい題材を、あくまでもエンターテインメントとしてテンポよく描いている。だから、身につまされながらも、笑いながら見ていられるのだ。

 中でも、天海のコメディエンヌぶりと、草笛のお達者ぶりが際立つ。前田監督によれば、ラスト近くで芳乃が篤子に言う「人間わがままに生きた方が勝ちよ」というセリフがこの映画のテーマだという。山田洋次監督の「家族とはやっかいだけど愛おしい」という言葉が、この映画にも当てはまる。

『そして、バトンは渡された』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/00f7f5391395477ce9e81a4b3a5ed16e


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